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第35回Eビジネス研究会 |
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『ビジネス誌編集長が本音で語るプロジェクト成功の法則、失敗克服法』
〜あの新規事業・プロジェクトはこうして成功した〜
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ソフトバンク パブリッシング 株式会社 月刊『ビジスタ』編集長 佐藤浩志 氏 |
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35回目の今回は、ソフトバンク パブリッシングが発行する若手ビジネスマン向け月刊誌『ビジスタ』編集長の佐藤浩志氏をお迎えしてお送りしました。
3年前にIT雑誌としてスタートした月刊『ビジスタ』は、ITバブルの崩壊とともに実売部数が一時低迷し、方向転換を余儀なくされました。佐藤編集長は、ビジネス誌へのコンセプトの切り替えやターゲット層の見直しなど、大胆かつ斬新な切り口で同誌の建て直しを図った人物であります。今回は、その豊富な経験をもとに、ひとつのプロジェクトを成功に導くための方法論について、余すことなくお話しいただきました。
出版業界に限らず、すべてのビジネスに応用できる手法なので、ぜひとも参考にしていただきたいと思います。
■企画力を鍛える!〜会議革命のススメ〜
雑誌業界においては、特集の企画内容が部数を大きく左右する。従って、最も重視されるのが企画力である。セミナー前半では、企画の出し方、つめ方、効率の上がる会議の進め方など、ビジスタ編集部で佐藤編集長が実際に取り入れている手法を紹介していただいた。
そもそも企画力とは、自分一人でいくら熟考したところで鍛えられるものではない。考えたアイディアを人前で発表し、意見を聞きながらベターな方向へ進化させていく過程で身に付くものである。ビジスタ編集部では、短時間の会議を頻繁に行うことで会議の密度を高め、編集者の企画力を育てているという。
佐藤編集長は、まずその会議が本当に必要な会議かどうかを十分検討し、必要のない場合はやめて時間のロスを避ける。また、議題は短期的な問題について話し合うことを基本とし、中・長期の問題は中・長期の会議として別に行っている。こうすることで会議の目的を明確にするのである。
次に全員にプロジェクトへの参画意識を持たせるため、現在の進捗状況を「うまくいっていること」と「そうでないこと」の2つに分け、プロジェクトの問題点をできる限り洗い出していく。そして、ブレインストーミング、マネジメントコーチング(色々な人から意見を引っ張り出し、それを組み合わせることで問題の解決策を探るコーチング手法)などの手法を使いながら解決策を導き出すのである。
時には話し合いが停滞することもよくあるが、そんな時、佐藤編集長はある荒療治で編集者に喝を入れる。企画を進める上での問題点を1分以内で紙に書いて発表させ、もしそれが時間内にできない場合は「プロジェクトに非協力的な人」と判断してその場から退出してもらうのである。
「ダメな会社ほど会議が長い傾向があります。会議の基本は、問題解決の答えをたった1つ導き出すことなので、うちの編集部では早め早めに意見を出させて、『できること』と『できないこと』の取捨選択を進めていきます。じっくり時間を掛ければ良いアイディアが出ると思われがちですが、実はあまり変わりがないのです。少々荒削りなやり方かも知れませんが、要は一人ひとりにプロジェクトを成功させるという自覚を持ってもらいたいのです」
■計画力・実行力を鍛える!〜スタートダッシュ仕事術〜
企画の問題点と解決策についてコンセンサスが取れたら、次は、実際にプロジェクトを進める上での計画段階に入る。ここでのポイントは以下の4つ。
@本当にそのプロジェクトが成功するかどうかの見極め
……計画・予算・期間・体制等は的確か
Aプロジェクトの及ぶ範囲はどこまでか ……サポート体制の確認
Bプロジェクトの目的は明確か
……収益だけでなく、社会的貢献性がないと人は心から満足しない
Cプロジェクトの成功が個人の評価につながるか ……昇進、インセンティブなど
なお、納期については、3分の2を基準に前倒しで計画を達成することが原則で、それを守るためにはプロとして徹夜もいとわない。しかし、そうは言ってもこれを読んでいる皆さんには体力に限界もあろうから、ここで佐藤編集長直伝とっておきの「スタートダッシュ仕事術」なる計画術を教えておこう。
スタートダッシュ仕事術とは、文字どおり週の前半(月〜火曜日)までに仕事のすべてを終わらせ、水曜はその補完日、木曜は翌週以降の長期的な計画づくり、金曜は好きなことを自由にというスケジュールの立て方である。実際、ビジスタ編集部にはこれを実践している強者(つわもの)編集者がいるという。彼の仕事ぶりは決しておざなりなものではなく、むしろ他の編集者よりも余裕があり仕事もデキるというから、皆さんも一度お試しあれ!
■見切り力を鍛える!〜失敗から見えてくるもの〜
月間「ビジスタ」は、この6月号(5月8日発売号)をもって、紙媒体としての役割を終え休刊、同時に無料電子ブック版「ビジスタ」として生まれ変わる(電子ブックについては後述)。その裏には、広告収入の減収や部数の低迷などによる莫大な借金の存在があるのだが、そのあたりはオフレコに。実は今だから言えるが、同誌は創刊当初から失敗の連続だったのだ。というのも、創刊した2001年、同誌は当時米国で部数を伸ばしていたIT産業情報誌「インダストリー・スタンダード」の日本語版としてスタートを予定していたものの、そのライセンス権を日本の某出版社に買われ提携に失敗。さらに、追い討ちを掛けるようにITバブルの崩壊が続き、雑誌のコンセプト変更を余儀なくされる。佐藤氏はこの頃編集長に就任するが、それ以前に歴代2人の編集長がおり、1人目は創刊1号で、2人目はわずか半年で更迭されている(ちなみに佐藤編集長は2年)。最も売れ行きの悪い時は、5,000部を切るまでに落ち込んだこともあったというから、月刊誌としてあり得ない数字である。
様々な紆余曲折の中で、佐藤編集長が悟ったことは、雑誌が売れる売れないは、特集の中身で決まるということ。よく評論家などはタイトルやプロモーションの問題で片付けるが、それは大きな間違いで、中身がよければ読者はついてくるのだという。事実、ビジスタでも特集の内容によって、実売部数に大きな開きがある。コンテンツ重視の傾向は、IT業界においても同じで、今後はもっと顕著になっていくことだろう。
<6月スタートの電子版『ビジスタ』とは・・・>
月刊『ビジスタ』は、6月号をもって休刊すると同時に無料電子ブック版「ビジスタ」として新規スタートします。これは、Flip
viewerという閲覧ソフトによりPC上(Windows)で雑誌感覚のページめくりができ、しかも音声、映像といった情報までもが盛り込まれた新しい電子出版の形です。詳しくは、ビジスタのホームページをご覧下さい。http://www.sbpnet.jp/bisista
2004.5.27
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