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■ Report 第38回Eビジネス研究会
 

『最新のプロモーション手法、SEMとは』
〜SEOを包括するSEMとリスティング広告の具体的活用方法について〜

 
(株)アイレップ 代表取締役 高山雅行 氏
(株)アイレップ SEMコンサルタント 紺野俊介 氏
SEM総合研究所 渡辺隆広 氏

pdficon レジュメ(抜粋版)ダウンロード [pdf 96KB]

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38回目の今回は、インターネット広告代理店としてプロモーションノウハウに高い実績を持つ(株)アイレップと、同社におけるシンクタンク組織・サーチエンジンマーケティング総合研究所から3名の方をお招きし、インターネットマーケティングにおいて最も投資効果が高いと注目されているSEM(検索エンジンマーケティング)の戦略的活用法についてお話いただきました。
今回特に注目したいのは、ベストセラーとなった「検索にガンガンヒットするホームページの作り方」(翔泳社)の著者としても知られる渡辺氏のお話です。SEO(検索エンジンのチューニング)についてはもちろん、Yahoo Japanが検索エンジンをGoogleから独自のYST(Yahoo Search Technology)に切り替えた後の動向とSEM対処法などを中心にレポートしたいと思います。


日本のリスティング広告の現状


はじめに、高山氏よりSEM(検索エンジンマーケティング)の基本概念と重要性、ならびに日本におけるリスティング広告の現状についてお話いただきました。
SEMとは、検索エンジンを通じて、見込み客をウェブサイトに集客する手法全般のことを指し、以下のモデルがあります。
  1. SEO……検索結果を上位にするようにウェブサイトをチューニングする
  2. PPC……検索連動型(リスティング)広告、オーバーチュア、Googleアドワーズなど
  3. PFI……一定料金を支払うことで、定期的にクロールされることを保証するサービス

インターネット広告市場の拡大とともに、検索エンジンを一つの広告媒体ととらえ総合的にマーケティングする必要性から、SEMはいま非常に注目されています。2.の有料リスティング広告については、日本にはOverture、Googleアドワーズ、Listop、ルックスマート、Jリスティングといった5つのモデル
(PC向け)がありますが、やはり中心はYahoo MSNをパートナーサイトに持つOvertureとGoogleアドワーズで動いているのが現状です。
これらのモデルの特徴は、
  1. クリック課金制の広告である
  2. ユーザーの検索結果画面に、あたかも検索結果画面のように広告が表示されるため、全く関係ないユーザーを誘導してこない。そのためメール広告やバナー広告と比較して、ホームページまで誘導するワンクリック単価が安く抑えられ、かつ顧客のモチベーションも高いため費用対効果が高い
といったことが挙げられます。


SEMの市場とリスティング広告


続いて、紺野氏より現在のSEM市場について説明がありました。リスティング広告を含めたSEMの展開が始まったのは、まだほんの数年前のことですが、初期段階ではクライアントも4マスの広告に比べて、とりあえず費用対効果が高いという認識から始まりました。当時はワード数も一つのクライアントで数十のキーワードから始まり、1件の顧客を獲得するのに、従来の広告手法よりやや効果があるという比較で、企業の予算がSEMに流れていた状況でした。
その後、次第に予算規模が大きくなっていく中で、第二段階として、顧客の予算の最適化というステージに入り、現在はそれが落ち着いている状況です。数百万円から数千万円という規模でSEMに予算を投下している企業が出てきている昨今、クライアント側もこれまで広告をフローとして考えてきましたが、今ではマーケティングデータを取得して、データとしてストックを始める段階に入っています。
インターネット広告全体の市場規模の拡大に比例して、SEM市場も拡大しており、今後は業種やビジネスモデルごとにコアユーザー、見込み顧客がどのようなキーワードを使って検索してくるのかを把握することが、成長のカギを握ると言えるでしょう。言うまでもなく、アイレップのような広告代理店やコンサルタントのビジネスチャンスは、こうしたノウハウの提供にあるわけです。


どうやって顧客の獲得数を伸ばすか


では、SEMにより顧客獲得数を伸ばしていくには、どうしたらいいのでしょうか? 答えを簡単に言うと、獲得数を伸ばすには「一人あたりの獲得単価を下げていく」ことが有効です。
つまり、ワンクリック単価を下げていけば、当然獲得単価は下がります。さらに、同じ顧客を誘導するにしてもコンバーションレート(実際の商品購入や資料請求につながる確率)を上げることにより、獲得単価は下がるということになります。
実例を挙げて、以下3つの具体的手法について紺野氏より説明していただきました。
  1. Landing Pageの考え方
    表示される文章からクリックして飛んでいく先の考え方です。実際にあった例として、あるパソコンショップがOvertureのスポンサーサイトに掲載していて、ユーザーが「パソコン」というキーワードで調べた場合、「デスクトップ型パソコン」の特集ページに飛び先を置いていました。その時のコンバーション率(商品購入)は、約0.8〜0.9%で、売上の内訳は、デスクトップパソコン6割、ノートパソコン4割だったそうです。
    そこで、同社はキャンペーンページを作って、デスクトップパソコンを中心に紹介しノートパソコンも部分的に紹介したところ、コンバーションレートが約1%も上がったそうです。つまり、キーワードレベルで、どういったユーザーがモチベーションを持っているかを考えるだけでも、費用対効果は変わってくるのです。ポイントは、広告をどこに飛ばしていくのかをよく考え、妥当な飛び先がない場合は、そのサイトを作ることが効果的だそうです。

  2. Keywordの考え方
    例えば、「購入」「登録」などの行動名詞や、「大物」「赤色」などの形容名詞をキーワードとして入れてくるユーザーが、いったい何を目的にしているのかは分かりません。しかし、そこでそれぞれの意味合いを分析していくことにより、そのキーワードを登録するべきかしないべきか、もしくはどういったサイトに飛ばすのかを考えることによって、少なからず効果は表れるといいます。

  3. title&descriptionの考え方
    説明文のことですが、タイトル説明文で地域や商品を限定することによって、ユーザーに無駄なクリックをさせないようにすることが可能です。逆に言えば、クリックさせなければ限られた検索数からの誘導を増やせないので、「送料無料」「キャンペーン」などのキーワードを組み合わせることにより、単純に誘導数を増やすモデルではなく、戦略を持ったタイトル説明文を作って運用していく必要があります。


SEMにおけるSEOの活用方法


最後に、渡辺氏よりSEM戦略全体の中での「SEO活用法」についてお話いただきました。
一般的に、検索エンジンからウェブページに訪問してくる顧客というのは、検索中に訪れるため、質が高いと見込み客と言えます。ですから、バナー広告やメルマガ広告と比較すれば、商品などに対する関心は相当に高まっているので、購買率も高くなるというわけです。
ところで、検索エンジンから入って来るユーザーには2パターンあるわけで、一つはリスティング広告、もう一つは通常検索つまりアルゴリズムの方から来るということになります。
いずれも検索結果に広告は表示されるため、広告主側から見ればどちらも同じに見えますが、検索エンジンマーケティングという戦略全体で考える場合は、双方をきちんと区別する必要があるということです。すなわち、質の高い見込み客の集客、あるいはROI(投資効果)、コンバーション率を高めるためにも、リスティング広告と通常検索はそれぞれの利点と欠点を理解した上で活用しなければ、無駄な費用や時間を発生させてしまうというわけです。
では、リスティング広告と通常広告の違いについて整理しておきましょう。
  1. 金銭的コスト
    リスティング広告の場合は、クリックごとに広告費用が発生します。反対に広告予算が0円になってしまった広告は非表示となります。ですから、広告の予算があまりにも少なかったり、予定外に検索回数が多い場合は、全く表示されない期間が発生してしまう点が欠点です。
    一方、SEM広告の場合は、クリック数にかかわらず追加コストというものは一切発生しません。これは、アルゴリズムの並べ替えによって通常検索の中に出るため、何回クリックされてもクリックコストは発生しません。これがSEOの利点です。
    もう一つは、SEOを施行する時にも二段階あり、一つは既に完成しているウェブサイトにSEOを施すケース、もう一つは、ウェブサイトをリニューアル、あるいは新規に立ち上げる際にSEOを取り入れるケースです。
    後者の場合は、ウェブサイト設計費用にSEOが組み込まれるため、SEO自体に発生する追加コストは特別ありません。したがって、ウェブサイトのパフォーマンスを最大限に引き出すことができます。また、もう一つ重要なことは、ウェブサイトを構築する前にSEOを組み込んだ場合と後に組み込んだ場合では、基本的に効果や上位に表示できるキーワード数に差が出るということです。これは、既に完成してしまったウェブサイトにSEOを組み込もうとすると、レイアウトやデザインなどに制約が出るためです。
    ウェブサイト設計前にSEOを組み込んでおけば、最初から「このキーワードでヒットすることが必要だ」とか「これくらいのキーワード数で上位に出せる」などの約束ごとを考えて設計できるため、金銭的なコスト面では有利になります。したがって、金銭的コストで考えると基本的にSEOが「有利」となります。

  2. 時間的コスト
    リスティング広告の場合は、広告を掲載したいとき、いつでも掲載が可能です。また、期間を限定して広告を掲載することもできます。ですから、広告費用がある限り継続して掲載ができるのです。
    一方、SEOの場合は掲載の時期や期間の操作はできません。また、キーワードの順位変動により、必ずしも期待する位置に継続掲載ができません。この点ではリスティング広告が「有利」となります。

  3. 掲載内容のコントロール権利
    リスティング広告の場合は、どのキーワードで検索結果に表示するか、クリックされた時にどのページに飛ばすかという、ランディングぺージの設定ができ、掲載している広告の内容も自分で管理ができます。これに対しSEOは、これらの管理が困難です。基本的に、この点ではリスティング広告の方が「有利」と言えます。
以上をまとめると、両者のメリット・デメリットにはかなり違いがあり、その使い分けが重要となってきます。そのポイントをまとめると以下のようになります。
  1. リスティング広告を用いた方がよいケース
    • 期間限定のキャンペーンのプロモーションを行う時
    • 利用するキーワードが限定的な時
    • ウェブサイトの設計上の都合により、SEOが不可能な時
  2. SEOを用いた方がよいケース
  3. リスティング広告でのキーワード単価が悪い時(費用対効果の観点から見合わない時)
  4. 費用対効果を高めたい時(リスティング広告の消費金額を下げたい時)
  5. これからウェブを構築する時(利用すべきキーワードが限定されている時に限る)
  6. 広告予算に限りがある時
なお、実際には、両者を組み合わせて使う方が効果がある場合もあります。例えば、通常検索経由の訪問者のコンバーション率を改善するために、入口ページ(Landing Page)にリスティング広告を用いるなどです。したがって、自社の戦略に沿って、組み合わせ方を考えていく必要があります。


Google以外の検索エンジンにも対応する必要はある?


2004年5月末、Yahoo JapanがついにGoogleから独自の検索エンジンYSTを採用しました。一般的に、これまでSEOについてはGoogleに最適化してきましたが、今後は果たして両者に対応していく必要があるのでしょうか? また、来年にはマイクロソフトが現在開発中のMSNBotやアメリカのAsk.jpなど、これまでとは異なるアルゴリズムの検索エンジンも登場します。今後はこれらにもSEO対策を施す必要があるのでしょうか?
答えは「ノー」です。結局、検索エンジンとは、ある特定のページを上に表示したり、下げたりするためにアルゴリズムを作っているわけではなく、インターネット上にある数十億のページの中から、最も重要なページと重要でないページを見極めるためにあるものです。ですから、ロボット型全文検索サービスがどのようなコンセプトでアルゴリズムを作っているのか、という仕組みさえ押さえておけば、これらの新型検索エンジンに惑わされることはありません。
そもそもインターネット検索技術の本質は、実は「ハイパーリンクの分析を通じてウェブページの価値を判定する」という所にあります。これはYahooもGoogleもその他も一緒で、アプローチの仕方が違うだけなのです。また、検索エンジンとは、人間が良いと思うページを検索エンジンでも判断したい、つまり人間の判断に近づけるのが理想の姿なのです。そのアプローチとして、現在はリンク分析と構文解釈によりページの価値を判断しています。
ですから、今後出てくる検索エンジンすべてにウェブページを最適化しようと思ったら、まずページランクを上げようという考えは捨てるべきだそうです。その上で、誰が見てもよいページというものを考えます。そのポイントは、以下の6つに集約されます。
  1. リンクの数(ページランクの考え方)
  2. リンクの質(質の高いページからのリンク)
  3. リンクの関連性(同じテーマを持つページからのリンク)
  4. リンクの文脈(リンク下にあるアンカーテキスト)
  5. リンクの多様性(より不特定多数のページからのリンク)
  6. 関連サイトへのリンク
さらに、二つ目のポイントはページをどうやって作ったらいいか、つまり「ページの最適化」です。この基本的な考え方は、前提としてページへの訪問者には「人」と「ロボット」の二者がいて、両者に対して適切に情報伝達をきちんとしようという考えがあれば、今後アルゴリズムがどう進化しようと順位が大きく変化するようなことはありません。
実際にページの最適化を行うには、訪問者として人とロボットの二者を想定して、両者に情報伝達できるウェブページを作ることがポイントです。その要件としては、
  1. 情報の論理構造(人が「見出し」と認識する部分をタグで「見出し」と定義)
  2. ライティング(トピックの明示、結論を先に書く等)
  3. コンテンツ(ページの役割、トピックの明確化)
  4. サインポスティング(道標、アンカーテキストで各々のページの役割を伝達)
といったことが挙げられるそうです。

今回は、非常に具体的かつ実践的な手法をスピーカーの方々にお話しいただき、SEMに携わっている方、興味をお持ちの方にとって参考となるものだったと思います。改めてスピーカーの皆様お疲れ様でした。


                                           2004.8.27
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