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第50回Eビジネス研究会 |
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『インターネットメディアにおけるニュースと報道のあり方』
〜市民記者ネットワークによる報道プロジェクト〜 |
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株式会社ライブドア
メディア事業部 執行役員上級副社長 伊地知 晋一 氏
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当日の様子はこちらから |
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50回目の今回は、メディア部長として、旧ライブドア買収時の担当者として、また、ポータルサイトに移行させてからもメディア担当部長として、堀江社長の番頭としてライブドアを切り盛りするメディア事業部 執行役員上級副社長 伊地知晋一氏をお迎えし、メディアの常識が変わるこの時代に、ライブドアのメディア戦略についてお話いただきました。
■インターネットのニュースに求められるものとは
ポータルサイトでニュースを閲覧するという行為がそれほど珍しくない現在に
おいて、インターネットのニュースに求められるものとは何なのでしょうか?
ライブドアが考えるニュースのあり方についてお話していただきました。
現在ライブドアではインターネットにてニュースを配信しております。どこのポータルでもニュースは配信されており欠かせないものですが、ライブドアでは、差別化をはかるために特徴をつけております。新聞社などから情報を買って載せるということは、お金があれば可能なのですが、後発という立場からより注目されるために独自のニュースと独自の記者を集めてニュース配信をしております。記者はプロの人間で20人ほどのチームで、それに加え市民記者ネットワークというものがあります。ライブドアでは、市民記者ネットワークをパブリックジャーナリスト(以下PJ)と呼んでおります。
■ライブドアが進める市民記者ネットワーク(パブリックジャーナリズム)とは
ライブドアが進める市民記者ネットワーク(パブリックジャーナリズム)につい
て、もう少し説明していただきました。
現在のPJ登録者数は600名ほどおります。研修を受けてから記事を投稿できるというシステムを取っておりPJからあがってきたニュースは、ソース確認や添削を行い1日10本程度配信されているというのが現状です。PJの数が増えれば記事も増えるという考えで2万人を目指して活動しております。
■今後のインターネットにおけるニュースのあり方と問題点
ライブドアが考える今後のインターネットにおけるニュースのあり方は、どの
ように想像されているのでしょうか?伊地知氏に詳しく説明していただきまし
た。
既存のマスメディアというのは、大多数が興味がありそうなものを一方的に送り出す形式です。インターネットというのは、新聞のように紙面に限りがあるわけでもありませんし、TV番組の枠という時間的制限もありませんので、ある意味無限に情報を配信することができます。
そういった状況において、インターネットの役割というのは大多数が興味がありそうなニュースを配信することは、社会的貢献という意味ではあまり意味をなさないので、市民記者ネットワークを有効に使い、よりニッチな情報を大量に集め、それを束ねてマスメディアのようなものに変えていく必要があるのではないかとライブドアでは考えております。
この考えをプロの記者で実施すると経済的に負担が大きくなりますので、ここで市民記者ネットワークを有効に使えないだろうか?と思っております。そもそも価値のあるニュースとは、人それぞれ違うものです。大多数が好むニュースももちろん必要になってきますが、個人レベルのニュースも需要はあるでしょう。高校野球を例にあげると、一般的に報道されるのは何処が甲子園に出場したか、というレベルですが、個人レベルで興味があるのは自分の出身校であり、もし一回戦負けをしたとしても、どのような形で負けたのかというところに興味があるはずです。
つまり、ニュースの価値というのは、社会に対する大小に関わらず、個人にとっての価値であり、また別のところにもある。そういうところを、何万人規模になった市民記者ネットワークで拾いあげていければといいと思っております。また、PJというのは全国に点在しておりますので、天災が起こった際に、現場に記者を送り込むのではなく天災を体験したPJに記事を書いていただくことで、内からの視点で記事を書くということに新しい価値が見出せるのではないかなと思っております。
■ライブドアポータルサイト今後の戦略
既存メディアのニュースとインターネットニュースの違いとは、何ですか?
今後どのようになっていくと予想されますか?と伊地知氏は質問されること
が多いそうです。一番皆さんが興味がある質問に答えていただきました。
新聞であれば、記者の方はたくさんおられて大量の取材をされています。会社に情報をたくさん持ち帰ってくると思います。しかし、実際新聞になると紙面に限りがありますから、すごく小さい記事になってしまうケースが多々あります。せっかく記者が取得した情報が有効に使われず、その記事に興味がある読者も、もっと深い情報を知りたいという願望があるにも関わらず、紙面の関係上、小さな記事で終わってしまう。
ここにライブドアとしては、可能性を感じています。小さくなってしまった記事に対してQRコードを貼り付け、そのQRコードを携帯などで読み込むと、原文の記事が読める形式を実現できないかと考えています。そうすることによって、記者が取得した情報は有効に使われ、記事に興味がある読者も、もっと深い情報を知ることができる。もっとニュースメディアの価値をあげることができるのはないか?インターネットを補完的に使用することによって既存メディアの価値をまだまだあげられるのではないかと考えております。
インターネットが流行ると新聞やテレビがいらなくなるのではないか、と皆さんから質問されます。インターネット以外のメディアで配信されているニュースは、興味のないニュースも視聴したり目を通さなければ、自分の求めるニュースに辿りつくことはできません。しかしインターネットでは大量な情報から自分が求める情報だけ取り出すことができる検索性に優れている点が特徴です。しかし、だからといって新聞やテレビがいらなくなるとは思っておりません。新聞とは優れた媒体で、いっぺんにパッと一覧で見ることは、インターネットでは難しいですし、使い捨て・携帯性も新聞にはあります。テレビに関しても同じで、テレビはマルチキャスティングに優れています。マスメディアには強みがありますので、これがすぐにインターネットに取って代わるということは考えにくいでしょう。むしろ共存していくのではないかと考えています。
2005.4.9
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