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第59回Eビジネス研究会 |
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『インターネット時代におけるPR術』
〜インターネットPRの発想がビジネスチャンスを生む〜 |
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株式会社ニューズ・ツー・ユー
代表取締役 神原 弥奈子 氏
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59回目の今回は、株式会社ニューズ・ツー・ユーの神原弥奈子社長をお迎えし、リリースポータルを活用した「インターネット時代におけるPR術」についてお話いただきました。
■ニューズ・ツー・ユーの誕生
ニューズ・ツー・ユーがリリースポータル「News2u.net」の配信サービスを始めたのは、2001年7月のことです。今でこそ、その存在は一般的なものになりましたが、当時はリリースポータルの名前すら知る人は少なく、まさにゼロからのスタートだったといいます。
立ち上げ当初は、コンテンツも会員数も少なかったため、神原社長が最も懸念したのは、「お客様がせっかくアクセスしてきてくれても、次もサイトに来ていただけるのか」という想いでした。そこで、ある「イメージ戦略」を取ったのです。お客様向けには「プレスリリースの配信代行サービスです」という表現で、分かりやすくプレゼンを行い、まずは「メールでニュースリリースをマスコミ向けに配信する」というイメージを植え付けました。
その後は、とにかく地道に会員獲得に奔走しながら、リリースの配信だけでなく、配信した後もその情報を自社サイトに掲示する付加価値サービスを付けて、ひたすらサービスの魅力をアピールしていったそうです。
そして、会員企業が300名を超え、ニュースリリースが2,000本を超えたとき、初めて「News2u.net」という名前を前面に出していったといいます。
■サービスの3本柱
「News2u.net」のサイトの構成を簡単に説明すると、トップページでは、会員企業のその日の最新リリースが時系列で掲載されています。これらは、業種ごと、情報ごとにカテゴリーがなされ、その中で複合検索などもできます。
また、サービス内容としては、以下の3つがあります。
1) ニュースリリース配信業務……希望する業種ごとにメールで送るものと、当日のリリースをヘッドラインだけで送るものの2種類。
2) インターネットメディアへの露出……会員企業のリリースをポータルに掲載保証すると同時に、リリースの本文をライブドア、goo、エキサイト、ZDネットなど「コンテンツパートナー」と呼ばれる提携のパートナーサイトに掲載。
3) お客様企業のウェブサイトの更新……リリース情報をスピーディーに更新。
最も大きなポイントは、2)のインターネットメディアへの露出です。例えば、ライブドアの例では、トップページの経済欄・企業情報ページの中に自社のリリースが表示されたり、上場企業の場合には、ファイナンスの欄にIR情報だけでなく自社リリースも掲載することができます。
さらに、今後は今までオプションサービスであった、3)お客様企業のウェブサイトの更新をコアのビジネスに持っていきたいと、神原社長は考えています。その理由としては、ウェブサイトを外注している企業の場合、2)を使うことによって、ポータルに表示されるリリース情報に自社サイトの更新が追いつかず、お客様からクレームをもらうケースが増えているからです。
外部に情報を発信することにとらわれて、自社のサイト更新をおろそかにしがちな企業も多いため、こうしたサービスのメリットは大きいといえるでしょう。
■サイトの信頼性を重視
現在、「News2u.net」の利用企業は、約600社、登録リリース数70,000本、月間ページビューは80万にまで成長しています。ここまで来るには、サイトの信頼性をお客様に地道に訴えていった経緯があると神原社長はいいます。
「News2u.net」の特徴は、サービスを利用するお客様には必ず帝国データバンクの企業コードを取得してもらい、確実に商業登記なされた企業であることを証明してもらっている点です。また、リリースを配信する担当者は、各企業1人に絞ってもらい、必ず電子証明書を発行しています。これによって、悪意ある情報発信を防いでいるのです。こうしたサイトの信頼性を築き上げているからこそ、様々なコンテンツ提携も可能なのです。
現在のサイトの傾向としては、訪問者はメディア関係者によるものが約6割、企業が4割となっており、会員企業の競合、取引先企業からのアクセスが増えている点が特徴です。これについては、インターネットの発達に伴い、既存の紙媒体だけでなく、企業のウェブサイトなどインターネットからの情報を欲しているビジネスユーザーが多いことが考えられるでしょう。
■企業ウェブサイトの課題
では、今回のテーマである「インターネット時代のPR術」について、企業のウェブサイトは、今後どのような方向へ進んでいけばよいのでしょうか。
神原社長は、まずインターネットの特性を理解した上で、自社サイトの構成を積極的に見直す必要があるといいます。
改めてインターネットの特性をまとめてみると、次の3つに大別できると思います。
1) メディアとしての特性……距離と時間を超えたメディア、制約のないオープンな文化、匿名性の高いメディア
2) 表現の特性……多言語対応可能、映像・画像データでの情報提供・双方向コミュニケーション
3) 運営面の特性……24時間対応、効果測定可能、セキュリティの不安
中でも、神原社長が最も重要であると考えるのは、3)運営面での特性です。
なぜなら、ユーザーの基準となっている基本的なサービスやコミュニケーションの仕方をよく考えてサイトを構築しないと、顧客離れにつながる危険があるからです。
これについては、企業の情報発信の変化に着目する必要があります。
企業では職務別にステークホルダー(利害関係者)が異なり、彼らに対する情報発信手段もそれぞれ異なっています。例えば、広報担当者であれば、ステークホルダーは社会全体であり、それに対する情報発信手段はマスメディアなどになります。また、総務担当者であればステークホルダーは従業員であり、情報伝達手段としては社内報など、IR担当者であれば、投資家や株主がステークホルダーで、IRレポートや株主総会で自社の情報を公開します。
したがって、これまでは各セクションで接点が限られており、部門を超えたステークホルダーと接点を持つことはあまりなかったわけです。しかし、企業がウェブサイトを持つことによって、すべてのステークホルダーが同じ情報を見ることができるようになったのです。ウェブサイトの構築においては、こうした情報リテラシーの変化をきちんと捉えることが非常に重要だといいます。
■緊急時も想定したウェブサイトの構築を
運用面でのもう一つのポイントは、ニュースサイトからの集客についてです。今や情報のスピードという点では、ニュースサイトが最も早いことはいうまでもありません。したがって、ニュースサイトからリンクして企業のウェブサイトに入っていっても、知りたい情報が掲載されていなかったり、更新が不備であるという事態が多く発生しています。
こうしたことが頻繁に起こると、消費者の心象を害したり、緊急時の対応に対する非難の書き込みが伝播することによって、企業のブランド価値や信頼が低下するという危険性もでてきます。
したがって、企業は緊急時と平常時それぞれに対応したウェブサイトの運用・管理体制を整えることが重要で、ウェブサイトの作成や更新を自社の「情報システム部」にだけ任せたり、外注することは今後ありえないことだと神原社長はいいます。
■ステークホルダーを意識
では、そもそも企業がウェブサイトを作るということは、どういう意味を持つのでしょうか。神原社長は、これまで紹介した様々なサービスを運営したり、自分自身でもウェブサイトの作成をしていく中で、企業のウェブサイトのあり方について改めて考え直したといいます。
そこで出た結論は、企業がそれを作る上では、以下のような相乗効果まで考えた仕組みが必要があり、逆にここまでやらなければ、わざわざ高いお金を掛けてまでウェブサイトを作る意味はないといいます。
<ウェブサイト構築による相乗効果>
(1)ホームページの構成としては、会社情報がまずあって、そこでの告知や企業への理解促進を図ることによって集客をはかる
(2)定期的にニュースリリースやケーススタディーを更新することによって、最新情報の提供とホームページの更新が可能となり、そこで集客をはかる
(3)マス広告やオンライン広告を使い、イベントやキャンペーンの告知を行い、集客を行う。また、それらによって顕在化した顧客のニーズが拾えるとともにメールアドレスの入手、市場調査などが可能となる
(4) それらの顧客にメルマガ等で継続的な情報提供を行い、集客と同時にコンテンツの蓄積を行う
(5) 次回のイベントの告知等を行い、そこで顧客情報を入手する
インターネットの登場によって、これまではニュースリリースを使い、メディアを媒介としてしかステークホルダーに届かなかった情報が、ダイレクトに結び付くようになりました。したがって、ウェブサイトの構築は、今後も企業の「顔」としての役割を一層強めることになるでしょう。
さらに今後は、積極的にサイトの見直しを行いながら、自社をより知ってもらうための工夫も必要です。そういった意味で、神原社長がお客様企業にお勧めしているのが、実は「社長ブログ」だそうです。その効果は、想像以上のものがあると自負しているそうで、実際に「社長ブログ」をはじめて、ビジネスが拡大したという事例も多いそうです。
2005.10.6 |
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