61回目の今回は、株式会社アドウェイズ取締役COOの松嶋良治氏をお迎えして、急成長するモバイルアフィリエイトの現状と今後の展開、またPCとは違ったモバイルアフィリエイト成功のヒントについてお話いただきました。
■モバイルアフィリエイトの市場
モバイルアフィリエイトの市場は、インターネット全体の広告費約1,814億円(2004年)のうち、モバイルの広告費が約180億円、うち約20億がモバイルアフィリエイト(成果報酬型)の比率となっています。あるシンクタンクの調査によれば、今年中にモバイルの広告市場は300億円規模にまで成長し、アフィリエイトの市場は、45億円に達するものと予想されています。これは、携帯の広告費全体の15%にあたります。
一方、PCではどうかというと、2002年度は5.5%、2004年度は12.6%となっており、PC、モバイルともにアフィリエイトの比率はどんどん上がってきているといえます。
■売上1位は消費者金融会社
はじめに、モバイルアフィリエイトの現状について、松嶋氏に説明していただきました。ポイントは以下の3つです。
1)出稿クライアントの業種と提携メディア
現在、アドウェイズにおけるモバイルアフィリエイトの売上は、月間1億円強あります。このうち、出稿クライアントの売上で最も多いのは「金融業界」で、中でも消費者金融会社やクレジットカード会社が中心になっています。
次に多いのは、モバイル上で会員を集めて何らかのビジネスを行う「メディア関連会社」(オプトインメールや懸賞サイトなど)です。続いて、キャリア系の公式サイト、エステティック会社、結婚情報サービス会社、ECの順になっています。ECについては、通販会社などへまだサービスを開始したばかりですが、モバイルとの相性もよいため、今後成長が期待される市場だと松嶋氏はいいます。
また、2位のメディア関連会社について、アドウェイズに登録しているメディア社(媒体社)のジャンルを見てみると、リンク集・ランキングサイト、キャッシングポータル、ポイントサイト、法人懸賞・無料着メロサイトの順になっており、売上的にはポイントサイトが最も高くなっています。
2)PCのアフィリエイトとの違い
PCアフィリエイトとモバイルアフィリエイトの最も大きな違いは、検索エンジンからのコンバージョンがモバイルの方が「弱い」という点です。ヤフーやグーグルのようなリスティングばかりが売れているPCと違い、モバイルのリスティングは市民権を得たロボット型検索エンジンがないため、コンバージョン率を高めるノウハウ自体が異なります。
また、ユーザー層についてもPCより若年層が多く、その趣向性や感性も異なるため、メディア構築の際は、その点を考慮しながら行う必要があるといえます。
3)トラッキングの方法
インターネットのアフィリエイトでは、クッキーの技術を使ってブラウザにトラッキング情報を記憶していきますが、モバイルではクッキーが使えないため、アドウェイズでは「sessionID方式」というものを使っています。
「sessionID方式」とは、クリックごとに可変するランダムな7桁の英数字を設定し、その値を基にアフィリエイトシステムが成果情報を記録する仕組みになっています。インターネットの広告ではクッキーがあるので、誰がどのような経路を辿ったかが分かりますが、モバイルではそれができないため、全ページに「sessionID」を引き継ぐためのプログラムを、クライアント側で設定する必要があります。
一方、トラッキングにはもう一つ、「subscriberID方式」というものがあります。
これは、各携帯電話会社の公式サイトだけに有効な方式ですが、全ページに「sessionID」を埋め込まなくても、誰がどこを辿ったかが分かるプログラミング技術です。
■クライアントと媒体それぞれの成功事例
では、モバイルアフィリエイトを使って成功した事例には、どのようなものがあるのでしょうか。松嶋氏にクライアントとメディア、それぞれの活用事例を紹介していただきました。
1.成功クライアントの活用事例
事例(1) 消費者金融会社
消費者金融A社では、色々なメディアにキャッシング商品の案内を掲載して見込み顧客の申込みデータを集め、コールセンターから案内してカードを利用してもらいたいというニーズがありました。
そこで、アドウェイズのモバイルアフィリエイトを活用したのですが、成果単価は5,000〜15,000円の範囲内、月間獲得件数は約5,000件(想定)、月間予算は3,000〜5,000万円としました。結果として、アフィリエイト開始直後からかなりの成果が表れたといいます。
事例(2) コスメ系EC
コスメ系A社では、1セット1,050円のトライアルキットの購入者を獲得するために、アドウェイズのモバイルアフィリエイトを活用しました。キャンペーンページを通じて購買に結び付いたユーザーのデータをDB化し、リピーターを増やすことができました。成果単価は2,000〜4,000円です。
トライアルキットの初販では、売価より成果単価が高いので赤字になりますが、リピートさせることで利益を出すECの中でも特殊なビジネスモデル(「逆ザヤのモデル」というそうです)です。
事例(3) キャリア公式サイト
これは、アフィリエイトとは一味違ったユニークな事例です。キャリア公式サイトA社は、携帯電話各社のキャリア公式サイトでランキングを上げたいというニーズがありました。キャリア公式メニューのランキングは、利用者や月間ユニークユーザーの訪問数で決まりますが、ネットワーク内のユニーククリックのみをカウントする「クリック保証」の仕組みを使い、ランキングをアップすることに成功しました。
2.成功メディアの活用事例
次に、メディア(個人の場合)の成功事例を紹介していただきました。どのようなメディアが売上げを上げているのでしょうか。
事例(1) 個人メディア
Aさん(個人)は、アドウェイズのASPを使って、月間400万円の売上を上げています。手法としては、リンク集を使って色々なサイトにリンクを登録したり、総合リンク集を使っています。リンク集サイトは、PCではあまり一般的ではありませんが、モバイルでは非常に有効で、コンテンツの一部のようにきれいに作成すれば、これだけの売上を上げることもできるのです。
また、PCと違いモバイルの場合、トラフィックはSEO対策等で集めるのではなく、どのくらい地道に様々なリンク集、ランキングサイトに登録するかが成否の決め手になると松嶋氏はいいます。
事例(2) 個人メディア
Fさん(個人)は、キャッシングポータルを活用して、月間の売上500万円を達成しました。事例(1)で紹介したリンク集系の、いわば金融特化型のジャンルです。ディレクトリ型検索エンジンの中の「金融」「キャッシング」などのキーワード、ランキングサイト・リンク集の「金融カテゴリ」への露出でトラフィックを稼ぎます。
キャッシングポータルの場合、通常のリンク集より運営が軌道に乗りやすいため、月間数十万円単位の売上が出た場合、その後のネットワーク等への出稿でさらに規模を拡大させることが可能です。
ところで、現在、ジャンル別のポータルで売上が上がっているのは、モバイルではキャッシングポータルのみです。個人がモバイルアフィリエイトを始める場合、最もやりやすく、売上が上がる可能性を持っていることから、松嶋氏もお勧めしたいといいます。
成功している人の特徴としては、消費者金融会社のリンクだけを張るのではなく、「すぐに借りる」というメニューを作ったり、消費者金融に関する「用語集」を作ったり、「あなたに最適の会社はここです」というようなレコメンデーション機能を付けるなど、1つのコンテンツとしてサイトを作成している点です。こうすることによって、ビギナーユーザーにもなじみやすい印象を与え、幅広く顧客を集めることができるわけです。
■ モバイルアフィリエイトの今後の課題
現在、日本でモバイルアフィリエイトを展開する企業は、アドウェイズをはじめ、メディアフラッツ、DeNAといった主要プロバイダが主にサービスを提供しています。最後に、今後予想される業界全体の動きとアフィリエイトとの関連について、松嶋氏より説明がありました。
今後、市場において最も脅威とされるのは、やはり「フルブラウザ型携帯電話」の普及です。これによって、モバイルでもクッキー技術を取得することができるため、トラッキング方法がPCと同じになったときに、モバイルはどうなるのかという懸念はあるといいます。
また、2006年4月からNHKと民放各社で始まる「ワンセグ放送」(デジタル放送)も同じく脅威です。これに伴い、ジャパネットたかたなどの大手通販会社は、ワンセグ対応のサービスを開発しているため、EC市場はますます競争が激化することが必至といえます。
2005.11.11
|