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■ Report
  
第63回「Eビジネス研究会」                        平成17年12月16日(金) 
   
テ   ー  マ:       『MSNのWeb2.0的新サービスの正体とは』 
〜“Windows Live”“Office Live”と     
        広告検索サービス“adCenter”がもたらす変化とは〜
   
Eビジネス:
マイスター
マイクロソフト株式会社 執行役 MSN事業部 事業部長
塚本 良江 氏
    
当日の様子はこちらから
           
当日資料は
非公開   

63回目の今回は、マイクロソフト株式会社 執行役 MSN事業部長の塚本良江氏をお迎えして、マイクロソフト社が展開する新しいWebサービス「Windows Live」と、それを支える広告事業の戦略についてお話いただきました。


■オフラインとオンラインを連携


「Windows Live」は、2005年11月に発表された、マイクロソフトの「Live戦略」の一環として展開される個人向けサービスです。具体的には、メール、メッセンジャーなどの各サービスに分かれており、Windows製品とOffice製品を拡張し、オフラインとオンラインのサービスを連携させるために開発されたものです。


「Live戦略」全体のコンセプトは、マイクロソフトがこれまで展開してきたWindowsなどの「ビジネスの生産性を上げる」ためのソフトウェア開発とは全く異なる方向性で、オンラインをベースにして「楽しいものを提供したり」、「人とつながっていく」ということが狙いとされています。


近年におけるネットワークとソフト・ハードウェアの進歩により、今までビジネスだけに利用されてきたPCは個人の生活の中にまで入り込み、その境界線がなくなってきていることから、マイクロソフトではこの点を敏感に察知したサービスの研究に取り組んできました。その答えが「Live戦略」なのです。


「Windows Live」については、マイクロソフトが持っている全ての資産を「オフラインとオンラインでシームレスにつないでいく」というコンセプトのもとに展開されており、今後は「Office」「Xbox」「Windows」などに、オンラインから直接サービスを提供できるような仕組みを作るといいます。


さらに、日本では携帯電話が非常に普及しているため、PCと同じサービスを携帯でユビキタスに受けたいというニーズも見逃すことはできません。現状ではPC向けのサービスが中心ですが、今後は他のデバイスに向けてもサービスを拡大していきたいと塚本氏は言います。


■カスタマイズ性が「Windows Live」最大の特徴


では、「Windows Live」の中身について、具体的に見ていくことにしましょう。
冒頭でも述べたとおり、このコンセプトは、オンラインをベースにして「楽しいものを提供したり」、「人とつながっていく」ということです。機能的な特徴は、オフラインとオンラインがシームレスにつながっていく点で、ユーザーは「Windows Desktop Search」と呼ばれる一つのインターフェイスの中で、オンラインとオフラインを自在に切り替えることができます。


例えば、メールであれば、今までPCにプリインストールされてきた「Outlook Express」とMSNの「Hotmail」の一本化が図れるようになりますし、メッセンジャーについても、WindowsとMSNの一本化が可能になります。すなわち、ユーザーが自分の好きなように機能をカスタマイズできる仕組みです。以下では、その他のカスタマイズ例について紹介します。


1.検索

今までの検索エンジンは、探したいキーワードに対する答えの要旨とリンク先を提供するのみでしたが、「Windows Live」では、入力したキーワードに対して、検索結果の中に既に答えがあるかどうかを表示します。さらに、その他にコンテンツをどんどんインテグレーションして入れていくことによって、一回で答えが出るような質の高い検索機能となっています。


2.メッセンジャー
メッセンジャー機能については、これまでテキストチャットが相場でしたが、「Version7」と呼ばれる2005年夏から採用されたモデルでは、テキストの他に音声での通話やテレビ会議ができます。また、アプリケーションシェアといって、メッセンジャーを通じて写真や動画などを送ることもできます。


3.その他
「Windows Live」には、従来のコンテンツだけでなく、もちろんブログなどのコミュニケーションツールも入っており、これまでなかったようなアプリケーションのコンテンツに関しても、自分の使い勝手の良いようにカスタマイズすることが可能です。


■「Windows Live」とMSNは併存する


ところで、「Windows Live」の誕生によって、これまでのMSNのサービスはどうなっていくのか、という疑問を抱かれる方もいると思いますが、両者は今後も併存して残ることになります。なぜなら、どちらのサービスも「エントリーポイントの一つ」であり、ベースにある検索やメール、メッセンジャーという機能は同じだからです。


では、なぜ二つのエントリーポイントが必要なのかというと、「Windows Live」の世界観というのは、情報に対して感度が高く、パーソナライズしたい、カスタマイズしたいという要望が強いユーザーに向けたものです。一方、MSNの方は、ある一連のプログラムを提供した上で、編集された世界観の中から選んでいくというユーザーのためのものです。こうした二種類のユーザーに対応するためにも、両方のサービスを継続していきたいとマイクロソフトでは考えています。


恐らく「Windows Live」を使うユーザーというのは、インターネットユーザーの2割前後ではないかと予想されますが、こうしたいわば『エッジの利いた』層のユーザーが、オープンなプラットフォームの中でソフトウェアを作っていく過程で、様々なアイディアをフィードバックしてくれる可能性は大いに見込めます。これによって、両者が成長していけばよいと塚本氏は言います。


■広告事業を第二の柱に


このようにマイクロソフトでは、今までのオフラインを中心としたソフトウェアの提供というものだけに止まらず、オンライン化を一層進めていく方針です。また、それらに関しては他社同様に無償で提供していくことを検討しています。そこで、収益の柱となるのが「広告」のビジネスモデルです。


近い将来、全世界におけるオンラインの広告収入は、5兆円規模に伸びていくと予想されており、しかもその中で大きなメディアのみが生き残っていく競争原理が働く中で、MSNが高いシェアを占めれば、この競争に勝ち抜くことができると考えています。経営トップも、「ソフトウェア事業に次ぐ第二の柱に、広告事業を置く」とはっきり言い切っているそうです。


では、具体的にどのような戦略を考えているのでしょうか。マイクロソフトでは、「adCenter」と呼ばれる広告のプラットフォームを昨年度から始めており、現在は、シンガポール、フランス、アメリカでロールアウトされて、日本でも今年の発表を計画しています。


第一段階では、「Windows Desktop Search」向けにオークション形式のリスティング広告をサポートするためのプラットフォームを提供し、その後それが進化して、バナー広告などに対してもターゲッティングを含め、各種の機能が提供できるようなプラットフォームにしていく予定です。


また、将来はPCだけではなく、多種類の端末に対して同時に広告の配信ができるようなプラットフォームや、MSNネットワークの中だけでなく、他のサイトに対しても広告の配信ができるようなプラットフォームを提供したいといいます。


広告の体系については、基本的には今見ている情報、探している情報とつながりの高い広告だけを提供していけるような、「広告でありながら情報の一つ」となるようなものだけを提供することが理想と考えています。そのためには、ユーザーのパーミッションを得ながらユーザー情報を蓄積したり、ターゲットを絞ることが必要になってくるのです。


以上が、マイクロソフト社が展開する新しいWebサービス「Windows Live」の概要です。塚本氏は、このサービスをこれからの10年、20年に向けた、マイクロソフトのコンシューマー向けオンラインサービスとして、MSNと同様に大きな事業規模に育てていきたいといいます。したがって、これまでマイクロソフトが開発してきたどのソフトウェアよりも投資規模は大きく、クオリティを上げていくことが今後の課題だといいます。





● 質疑応答

Q1 広告事業については、現状Googleさんが、アドワーズとアドセンスの組 み合わせで成功していると思います。特にアドセンスには、一般の人が 持つウェブサイトやブログに広告の出稿スペースを先取りされているよ うな気もします。こうした問題に対する対策は何かお考えですか?

A1 検索エンジンの開発そのものは2年前から始めましたので、Googleさん の後追いになることは事実ですし、そこまでの段階で差別化は図れない と思っています。したがって、今は猛スピードで追撃しているような状 況です。まだ開発途中の段階ですが、今後はユビキタスで広告配信がで きるような仕組みを目指していくつもりですので、そうしたものができて くると一つの差別化になると思います。


Q2 お話の中で、MSNと「Windows Live」という2つの世界観があるとい うことでしたが、両者の間を埋めて、ユーザーが自然と情報感度が高く なっていくようなシームレス化を図る仕組みは、何か考えていますか?

A2 実際は、MSNも全くカスタマイズができないわけではなく、「Windows Live」に近い形で、情報を増やしたり減らしたりすることができるテンプ レートは出していく予定です。間もなくアメリカで出てくるMSNのホー ムページでは、カスタマイゼーションの約半分を「Windows Live」から 持ってこられるような仕組みになっています。ですから、全く両者に架け橋 を作らないということではありません。


Q3 「adCenter」をグローバルに展開されているということでしたが、日本の 市場に合わせてローカリゼーションされたり、日本向けの独自戦略など はありますか?

A3 ローカリゼーションについては、日本語化を図るだけでなく(Google さんでもOvertureさんでもやっていますが)、振り込みの仕方ひとつ取っ てもUSのクレジット方式だけとか、プレデポジット方式の銀行振込と か日本は違いますので、そういったことは押さえていきたいと思ってい ます。時期的には2006年中を考えています。

2005.12.16
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