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■ Report
  
第66回「Eビジネス研究会」                          平成18年2月9日(木) 
   
テ   ー  マ:      『ネットビジネスにおける事業モデルの転換の実際』
  〜懸賞サイト「MyID」から価格比較サイト「ECナビ」への転換〜
   
Eビジネス:
マイスター
株式会社ECナビ 代表取締役CEO
宇佐美 進典 氏
    
当日の様子はこちらから 当日の資料(抜粋版)はこちらから
           

   

66回目の今回は、株式会社ECナビ 代表取締役CEOの宇佐美進典氏をお迎えして、起業と同社が急成長に至るまでの軌跡、そして事業モデルの転換期に行った組織マネジメントなどについて、お話いただきました。


■起業とこれまでの軌跡


ECナビが創業したのは、まさにネットバブル直前の99年10月、ビットバレーが花盛りし頃でした。現在の事業内容は、価格比較サイト「ECナビ」の企画・運営による広告事業が6割、ネットリサーチ事業が4割の比率になっており、2005年決算の売上は21億5,000万円、今期は30億円に達する見込みだそうです。


 ネット系企業の中では順風満帆に見える同社ですが、これまでにはいくつかの変革の波がありました。転機となったのは、2004年。それまで展開してきた懸賞サイト「MyID」をやめ、価格比較サイト「ECナビ」へと事業モデルを大きく転換した時でした。


「MyID」とは、ネット上で様々な企業が実施しているキャンペーン(懸賞)情報を1つに集約したサイトで、当初はこの「MyID」を中心に「オンライン上のプロモーション支援を行う企業になろう」というビジョンを置いていました。


とはいえ、インターネットの世界では、1つの事業のライフサイクルは3〜5年といわれ、その時稼ぎ頭となっている事業のみに会社の経営を依存していると、すぐに時代の変化に取り残されてしまいます。そこで常に新しい事業を挑戦し続けてきました。


宇佐美氏は、今のままでは事業の成長スピードが遅いと感じていました。
そして、オンラインプロモーション支援という事業を展開する中で、より一層成長していくためには、2つの方向性があると考えました。1つは、プロモーション支援により特化していく方法、もう1つはメディアの運営を伸ばしていく方法です。
2つのうちどちらを取るのか、社内で議論し合ったところ、「よりスケーラブルで利益率の高い事業をやりたい」という結論になり、第4期以降はメディア路線へと大きく舵を切り直したのです。

■新しいビジネスモデルへの検討

メディア企業への脱皮を目指した同社がその頃モデルとしていたのは、出版社のような複数のメディアを持つ企業でした。そこで、2002年には女性向けサイトの「@woman」を買収、また自社においてもモバイル事業の積極的な展開を行いました。こうした取組みが成功し、第4期、5期には売上も7.5億円から15億円へと急成長を遂げたのです。


しかし、次のステージとして100億、200億単位のビジネスを作るためには、これまでの、出版社のようなメディアの数に売上が直結していく「足し算型のビジネスモデル」では難しいと宇佐美氏は感じました。
そして、ネットビジネスの強みを発揮する意味でも、1つの大きなプラットフォームを作り、その上でビジネスを拡大していく仕組みが必要であると考えたのです。第5期から第6期の頃は、こうした「ビジネスモデルの転換」について、社内で活発な議論が繰り広げられたといいます。

ところで、こうした背景には、ネット広告を取り巻く外部環境の大きな変化がありました。99年に「まぐまぐ」がメールマガジンのポータルサービスを開始して以来、ネット広告の中でメールを主体とした広告モデルが大きな比重を占めてはいたものの、2002年頃からその効果について一部のクライアントや代理店の間では、疑問視する見方がありました。


一方で、同じ頃売上を伸ばしていたのが、オーバチュアやグーグルのリスティング(検索連動型)広告です。このような新しい広告モデルについて、同じメディアを運営する企業として大きな脅威に感じていたと宇佐美氏は言います。さらに、2003年はネットプライスの上場に代表されるように、ネット系EC企業がIPOにより市場を本格的に拡大してきた年でもありました。
もちろん、これ以前にもアマゾンのように日本においてIPOはしていないものの、有力なECサイトが存在しましたが、より一般消費者に使われるECサイトとして認知が広まっていきました。


こうした外部環境の変化の中、ECナビではその変化に合わせて自社の戦略を見直す必要性を感じ、新しい事業モデルの検討を始めました。

■事業モデル転換と組織マネジメントの再構築

一方、上記のような外部環境の変化と同時に、会社内部でも様々な課題が発生していました。


例えば社員の中には、先に述べた「出版社型のビジネスモデル」からの脱却を目指すべきだという意見が高まったり、広告事業を運営していく上では、より付加価値の高い事業への転換が必要ではないかといった問題意識もありました。
その背景には、当時一部のクライアントや代理店の中に、懸賞サイトに対してネガティブなイメージを持つ先があったことも事実です。そこで、「懸賞サイトの運営」という事業に自分たち自身が誇りを持つためにはどうしたらよいのか、改めて考え直したといいます。

宇佐美氏は、これらの環境変化に対して、新たな事業モデルとして「足し算」ではなく、「掛け算」で事業が伸びていくようなモデルとして、アメリカで伸びている価格比較サイトという新しい事業モデルに取り組むことで次の事業展開を検討することになりました。

当初は、「MyID」も「ECナビ」もそれぞれ別々のサイトとして立ち上げることを検討していましたが、選択と集中をより徹底するため、「MyID」と「ECナビ」の統合を提案したわけですが、当初は幹部をはじめ、社内の大多数が反対したといいます。
これらの反対意見に対して宇佐美氏は強引に押し切って進めるのではなく、社員の危機意識の共有を進めながら会社全体のコンセンサスをとりながら統合を進めていきました。その際、以下のような点に留意して、事業モデルの変革と組織変革を行ったといいます。

1) 事業環境の変化(トレンド)の見極めが重要。また、それに伴う競争ルールは、
   どのように変わっているのかをしっかりと認識する。


2) 危機感の共有なくして、方向性だけ示しても社員はついてこない。理解ではなく
   納得させることが重要。


3) 経営トップの決断力。長期的な成長のためには、短期的な痛みがあっても仕方
   ないという「割り切り」も必要。


4) 移行後のビジョンの共有。移行後の落ち込みから復活していくための、短期的な
   戦術の共有と、長期的にビジョンを実現していくための戦略の共有。


5) ベンチャーの強みは、一局集中のビジネスができることにある。中途半端な事業
   転換は命取りとなる。ハードランディングより、できるだけソフトランディングする
   ように心掛ける。

上記を留意することによって、統合以降も既存事業を更に伸ばしながら価格比較サイトとしてさらに事業を成長させ、第6期においては売上21億円を実現したと言います。

■価格比較サイトの今後

最後に、価格比較サイトは将来どのように進化していくのか、宇佐美氏より展望についてお話いただきました。


まず、その方向性としては、Web2.0の流れの中でインターネットの産業自体が大きな節目を迎えた今、価格比較サイトも新たな環境変化に対応して進化しなければならないということです。おそらく、従来のように価格を比較するビジネスモデルだけで、今後も事業を展開していくことは難しくなるでしょう。
将来的には「ショッピングサーチへの移行」が進むはずだ、と宇佐美氏はいいます。実際、アメリカでは価格比較サイトが「ショッピングサーチ」と呼ばれる検索サイトとして自立しており、今後は日本でも価格情報以外に様々な情報を配信する方向へ移行していくものと思われます。


例えば、商品IDをキーに商品情報をマッシュアップして、検索しやすくする方法なども考えられます。これによって、今までマーケティング力が競争優位のポイントなっていたものが、今後は技術力の優位性が差別化につながるのではないかと宇佐美氏はいいます。


価格比較サイトは、今後も進化する可能性のあるビジネスであり、その可能性こそがビジネスチャンスを作り出すともいえます。そのためにも、自らで業界の競争ルールを作り、他社に先駆けて変化していく柔軟性がこのビジネスに携わる人たちに求められているのです。




● 質疑応答


Q1 今後、価格比較サイトはショッピングサイトへの移行が進むというお話がありましたが、それにもかかわらず、なぜ2003年10月のECナビ立ち上げの時には、価格比較サイトとしてスタートされたのですか?
また、今後は技術力の優位性が重要になるというお話は、検索エンジンとしての技術力ということでしょうか?

A1 これについては、「ショッピングサーチ」という新しい言葉を認知させるのには時間がかかるという思いがありまして、業界の中で価格.comさんを筆頭に「価格比較サイト」というジャンルが既にあるならば、そのカテゴリーの中で認知してもらえた方が分かりやすいだろうという考えでした。
技術力については、「検索エンジン」の技術力ということです。口コミの影響力などを考える上でも、バックボーンになるのは、こうした技術になってくると思います。


Q2 事業モデルを市場ニーズに合わせていくことが重要というお話でしたが、中には、その波に乗れず下降していったサイトも多いと思います。ECナビさんが、そうした中で成功された理由はどんな点にあると思われますか?

A2 継続的、かつ組織的に事業モデルの見直しを行いながら、事業を展開してきたからだと思います。弊社の場合、3ヵ月ごとに事業計画を見直して、1年先、2年先くらいの見通しを立てていきます。そのためには、インターネットのトレンドがどのように変わっていくかを押さえておかなければ、長期的なビジョンは見えてこないので、その部分をきちんとやって来たことがよかったと思います。


Q3 価格.comという強い相手が対して、勝てると思った社長の信念、あるいは事業モデルの強みがあれば教えてください。

A3 懸賞サイトと一口に言っても、当時我々がやっていたのは、単に懸賞の情報だけを集めて検索できるというものではなく、会員DBを構築してどの会員がどの懸賞に応募したのかという「トランザクションデータ」を管理するサービスを運営していました。
当時の価格比較サイトというのは、商品データのデータベースしか持っていないシンプルなシステムでしたので、このトランザクションデータを応用すれば、「どのユーザーがどのショップでいくら買ったのか」というデータベースを構築することができるだけでなく、システム構築自体も難易度が高いため他社は中々追随できないと思いました。実際、価格.comさんの場合、昨年3月頃に会員ID制を導入していましたので、我々の方が1年ぐらい先行していたわけです。

2006.2.9
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