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■ Report
  
第70回「Eビジネス研究会」                         平成18年4月7日(金) 
   
テ   ー  マ:       『RSSのビジネス活用とメディアビジネスの今後』
〜“FeedBurner”にみる RSSネット広告の可能性と具体的事例〜
   
Eビジネス:
マイスター
GMOアドネットワークス株式会社GMOアフィリエイト株式会社
代表取締役社長 井上 祥士郎 氏
    
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70回目の今回は、GMOアドネットワークス株式会社、代表取締役社長の井上祥士郎氏をお迎えして、RSSのビジネスへの活用法とメディアビジネスの今後についてお話いただきました。


■メディアの移り変わり


ビジネスにおいて、なぜRSSが必要なのでしょうか。GMOアドネットワークス(以下、GMO)では、メルマガ、Webサイト、ブログ、SNSといった既存のメディアに代わって、いわゆるRSSを中心とした「フィード」が、今後新しいメディアになり得ると考えています。
このことを考える上で、はじめに従来型メディアにおける利用者の行動パターンの特徴を見ていきましょう。
例えば、Webサイトを見ている人は、検索エンジンを使って情報を見つけにいったり、メルマガの読者は新聞や雑誌の広告と同じように、自分の興味がある情報を定期的に受け取れる体制を取っています。
特にWebサイトについては、様々なサイトが乱立していて、その中を検索エンジンを使って利用者が知りたい情報を探しに行くという主体的な行動や、「価格.com」に代表されるように、自分で商品の情報を見つけて購買行動につなげたいというニーズがベースになっている点が特徴です。


その後、Web2.0の流れの中で出てきたブログとSNSは、利用者同士が情報を共有するという点が特徴です。これは、1つの商品情報やニュースソースというものに対して、色々な人の意見を聞きながら、利用者同士がコミュニケーションを図る手段として情報を共有しています。
ここでの情報の流れは、いわゆるブロガーやアフィリエイターのように、個人に委ねられる部分がかなり拡大しており、従来型のWebサイトのように、ニュースのポータルサイトがマスメディア的情報を伝える流れとは逆に、個人が情報発信をしています。


上記の従来型メディアに対してRSSのフィードは、Web、メルマガ、ブログ、SNSの持つ、利用者側から見た情報共有の要素・機能を全て備えています。もともとRSSというのは、記事や情報を運ぶ「情報伝達手段」としてのツールです。したがって、例えばあるキーワードを軸にして、簡単に価格比較サイトのようなポータルサイトを作ることもRSSでは可能です。


沢山の情報を取りたい人にとっては、Webサイトを一つ一つ見ていくよりも、自分の好きなカテゴリーを作って見ていけるという点で、Webサイト以上にほしい情報が見つけやすくなっています。

また、情報の受取りについても、最新の更新情報のみをメルマガのような形式で受け取る形式であるため、一方的に情報が送られてくる従来型のメディアに比べて利用者側に主導権がある点が特徴です。


■多様化するフィード情報


フィードの利用については、現状ブログの記事が中心となっていますが、最近では様々な形で利用方法が拡大する動きも見られます。
フィードビジネスの進歩は、アメリカに比べ日本が半年以上遅れているといわれます。これまでフィードはブログを中心に普及してきましたが、現在では株価情報や各種ニュースなどを通じて、フィード自体の扱っている情報がブログ以外にも拡大している状況です。この背景には、ユーザーのニーズが多様化することによって、情報を配信する側もユーザーニーズに対応しなければならないということがあります。


では、実際に読者が読んでいる情報とは、どのようなものなのでしょうか?多くはIT情報やニュースなのですが、興味深いのは、サッカーや競馬などのスポーツ速報、有名人のブログなどに根強い人気があるということです。
フィードにはWeb以上の情報量が流れていますが、受取側にしてみれば、コンテンツがどれだけ興味をそそられるのものかという点が最も重要なのです。
その意味では、ユーザーに選択権があるわけですから、ビジネスでRSSを活用する場合、何でもフィードにするのがよいということではなく、コンテンツの充実度が重要であると井上氏はいいます。


■紙からWeb、Webからフィードへ


大手ポータルサイトのうち、特に新聞社に関しては、フィード対応することに対して不安を感じている会社が多くあります。ここでは、各メディアがフィードを導入するにあたって、どのような点に不安を感じているのかについて考えていきます。


先に述べたとおり、フィードを導入することによって、情報を入手する、しないという選択権は読者に委ねられることになります。各媒体は、ページや構成で、いかに読者の目を引くかという視点でコンテンツを制作していると思うのですが、フィードというのは基本的に記事単位の情報形式で配信されるため、読者は様々なサイトの見たい情報だけをピックアップして見ることができます。
したがって、雑誌や本のように「情報の構成」という手法を用いてうまくブランディングやメディア化していく方法論が失われてしまうため、広告と記事の有料化という2つの軸で事業を展開しているメディアにとっては、読者離れへの懸念からフィードの導入に踏み切れないケースが多く見られます。


もう一つは、フィードの場合、情報の追加や引用が簡単にできるため、情報にユーザーが好きなコメントやタグを付けたり、カテゴライズをされてしまうと、メディアサイドで元フィードをコントロールできないというデメリットがあります。
その結果、各新聞社などでは、フィードの導入を認めない、もしくはフィード化する情報と、しない情報を取捨選択している例があります。なぜなら、実際にフィードを導入した場合に、自分たちのメディアのアイデンティティーが壊れてしまう不安があるからです。したがって、今後は一足飛びにすべてのメディアがフィードを導入するということはない、と井上氏はいいます。


こうした状況は、紙からWebにメディアの軸が移った時と全く同じです。紙媒体としてのメディアビジネスを行なっている企業はWebが登場したとき、本や雑誌が売れなくなるのではないかという不安を抱きました。フィードについても、この流れをネガティブに受け取るか、逆にビジネスチャンスと捉えるかは各メディアの戦略次第ということになります。


■フィード広告モデルの動向


フィードを導入する上で最も重要なのは、情報を発信する側よりも、むしろそれを受け取る読者の視点です。その視点がずれてしまうと、フィード広告のビジネスモデルを考えたときにも、どのような変化や効果が表れたのかがぼやけてしまいます。
フィード広告の技術的な速度はどんどん進んでいますが、一方でブロガーなどの発行者がWebからフィードに移ってきているというのは、興味深い事実です。また、広告と購読者がこの動きに追随するという傾向は、アメリカも日本も同じです。今後はWebに対して広告を出していたクライアントが、フィードにも広告を出すようになるでしょう。


次にフィード広告というのは、媒体側の広告ビジネスの視点から見たときどのようなとらえ方をすればいいのか、について考えてみたいと思います。これまでは、ニュースを扱う媒体を中心に広告枠の拡大が顕著になってきていました。特に最近はユーザーの検索結果に基づいて広告を出せるようになったため、Webに比べてフィードの間口が広がっている、と井上氏は言います。


したがって、今後フィードに関しては、RSS広告社の「トレンドマッチ」やアマゾンの「アソシエイト」に代表されるような、コンテンツマッチサービスが増えていくのではないでしょうか。また、ブログ人口が急増している中で、その記事に対して広告のリーチを持たせることも重要になってくるでしょう。そこでもコンテンツマッチの技術を応用して、リーチを伸ばしていくことが可能になります。


フィード広告の基本的な考え方は、ポータルサイトに対して検索や固定枠を取るというよりも、記事単位で広告枠を取れるということがクライアントの大きなメリットとなります。


■ロングテール時代のRSS広告


次に、今やWeb2.0のキーワードともいえる「ロングテール」という視点からフィード広告というものを考えていきたいと思います。フィードの読者数に関しては、依然として大手ポータルが多くを獲得している状況ですが、このメリットとしては、一定の情報量を安定供給できるという点と多くの記事を取得して読めるという点が挙げられます。この点にユーザーが自ずと共感を得ているのです。


大手ポータルの場合、綿密な取材に基づいて記事が書かれているため、ニュースソースとしての現実性や、ユーザーが知りたい情報が掲載されていることが評価されていると井上氏はいいます。


■二極化する広告モデル



フィードには、「デモグラフィクス広告」という考え方があります。これは、特にマーケティングの手法などでよく用いるものですが、簡単に言うと「発行元の属性に合わせて広告を配信していく」というものです。


重要なことは、機械的に広告をマッチングするのではなく、発行主の情報を確認した上で、それに関連した読者に対して広告を配信していくということです。デモグラフィクス広告では、そもそも広告主がある目的やテーマを持って記事を書いていますので、読者層が決まっている場合は、あえてコンテンツマッチをしていく必要がなくなります。


一方、コンテンツマッチに関しては、従来の新聞広告のように全網羅的により多くの広告主を獲得しなければ、読者層にマッチした広告は出しにくいという特徴があります。問題になるのは広告単価で、マッチングの適性度に応じて単価は決まってきます。


フィードに関してコンテンツマッチの広告の方がよいのか、それとも属性をターゲットとした広告がよいのかは、賛否両論があります。今後は、ユーザーによって再加工されたフィードが広告対象になり得る、と井上氏は言います。フィードは、ユーザー側でカテゴライズを自由に変えていきながらニュースを配信できるため、そこへ広告を配信していくということが有効な手段になります。


■FeedBurnerの事業概要


最後に、GMOアドネットワークスが米国のFeedBurner社と共同で取り組んでいる、フィード統合・管理システム「FeedBurner(フィードバーナー)」の事業展開について井上氏に説明していただきました。


FeedBurnerとは、フィード自体のトラッキングの外付けやフィード自体の編集ができるシステムです。これによって、ユーザーがどのリーダーに登録しているのかが分かるため、購読者数とユーザー動向を把握することができます。従来型のWebのアクセス解析と似ているところがあります。


例えば、自分のブログを持っている人がURLをFeedBurnerに登録すれば、その日からフィード自体の読者数が何人で、どういった属性の人が見ているのかということが把握できます。FeedBurnerのメインサービスは、その中にフィードの広告を配信していくということになります。






● 質疑応答


Q1 広告のビジネスモデルについて、Cnetのビジネスモデルを見て思ったのですが、グーグルの入札システムのようなものを作ってしまえば、それですべて済むような気がします。今後、GMOさんではそのようなシステムを作る予定はありますか?

A1 FeedBurnerのサービスのほかにも、GMOアドネットワークスではコンテンツマッチをはじめとして、自動入札のサービスも現在進行形で制作しています。ですから、クライアント様にとっては最も適切なメディアに広告を出すことが重要なので、媒体を選べるという点では重要なのかなと思います。ただ、フィードに限って見れば、成功報酬型のアフィリエイトというのは仕組上難しいので、今後の課題だと思っています。


Q2 今日はRSSの成功事例をいろいろ教えていただいたのですが、逆にこれは失敗してしまったという事例があれば、話せる範囲で教えてください。

A2 FeedBurnerではないのですが、「GMO FeedMe!」というコンテンツマッチでの苦い経験はあります。例えば、子育て日記のようなブログの中で、外国人と日本人の間に生まれた「エヴァン」という名前の子供がいました。 弊社コンテンツマッチ機能はそれを解析した結果、Amazon.co.jpの「エヴァンゲリオン」のというアニメーションのコミック紹介の広告を入れてしまいました。このブログは非常に人気があったために大変多くのお問い合わせを受けたことがありました。コンテンツマッチの技術的な視点からは適切なマッチングをしているのですが、本当の意味での文脈に沿ったマッチングというのは難しいと痛感しました。


Q3 デモグラフィクスについて、コアな情報が古くなって埋もれていくことが今後増えていくような気がします。そういった、ゴミのようでも、ある人にとっては非常に価値のある情報を、RSSの方で組み合わせていける方法があれば教えてください。

A3 アーカイブのところで残っていく情報に関しては、検索エンジンというのがRSSでもカギになると思っています。既に掲示板などの情報をRSS化する取り組みやメルマガをRSS化する取り組みが始まっていて、過去アーカイブのRSS化について、最終的には自分の興味のあるキーワードに引っ掛けるということが発生してくると思います。その意味では、過去のアーカイブも媒体には成り得るのかなと思っています。

2006.4.7
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