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■ Report
  
第80回「Eビジネス研究会」                         平成19年3月30日(金) 
   
テ   ー  マ: 『仮想コミュニティ「セカンドライフ」と
                 マーケティングとしての可能性』

〜Web2.0の中での仮想世界の立ち位置を考えよう!!〜
   
Eビジネス:
マイスター
株式会社野村総合研究所
社会ITマネジメントコンサルティング部
主席研究員 山崎秀夫 氏
    
当日の様子はこちらから 当日の資料(抜粋版)はこちらから
               

80回目の今回は、株式会社野村総合研究所の山崎秀夫氏をお迎えして、仮想コミュニティ「セカンドライフ」の社会現象としての特性、さらにマーケティングの可能性についてお話いただきました。


■ セカンドライフ現象(仮想世界現象)とは何か


社会心理学面からセカンドライフ現象について述べさせていただきますと、バーチャルリアリティー2.0と言われますように、いよいよ人工現実感がビジネスの中で活用されるようになったということです。


ゲームの発展形の要素として、第一に、TV番組のような上からのお仕着せでなく、大衆表現を含んだものであると言えます。

また、任天堂「Wii」で遊んでいるシーンをYou Tubeにアップするという楽しみ方を考えるとわかりやすいですが、アバターやモーションキャプチャーといったMixed Reality、仮想現実感の要素も入っています。もともとは村の入会(いりあい)地・共有地という意味をもつ、「コモンズ」という誠実で穏やかな交流の場がネット上に登場したともいえます。
ここで、企業がやらせのマーケティングをやるとものすごい反発を食らうわけです。そして、みんなデザイナー志向、みんなで一緒に考える場です。ゲームのライセンス販売ではなくITサービスとしてセカンドライフを捉えていくべきでしょう。


セカンドライフと、SNS・ブログなどのネットコミュニティーとの違いは「ネットイベント」が可能になったこと。つまり、ブログのような非同期な交流から、参加者どうしが同時にイベントを体験できるようになったことと、オフ会のようなリアルイベントをしなくても、ネット上でイベントを実施できるようになったことが従来のネットコミュニティーにはなかった点です。


■ セカンドライフの原点


セカンドライフはリンデンリサーチ社のCEOフィリップ・ローゼンテールが、1996年当時、妻が薦めた小説「スノウ・クラッシュ」に触発されて、仮想世界の立ち上げを決意したことから始まります。この「スノウ・クラッシュ」と、Burningmanという全米の芸術家の集まりがセカンドライフの原点となっていますので、セカンドライフをビジネスとして考えるなら理解しておくべきでしょう。


(1) スノウ・クラッシュ
ニール スティーヴンスン著、日本では早川書房から刊行されています。この物語では、ネット上でアバターとして落ち合った人同士が一緒にリアルの行動を起こします。仮想社会が必ずしも物理的な現実世界と切り離されていないのです。ハリーポッターのような完全なおとぎ噺とは違う。セカンドライフも現実とリンクした作り方を想定していると考えるべきです。


(2) Burningman
セカンドライフにおけるプリムを使ったものづくり、街づくりの原点になっているイベントがBurningman。これは、芸術家たちが砂漠の中に作品を持ち寄って、お祭りの間は自由な格好をして構わないというイベントです。これに触発され、芸術家に街づくりができると考えたのが、セカンドライフのもう一つの出発点です。


これら2つに見られる要素、すなわちメタバースのイメージ、街作りの自己組織化、リアルライフとセカンドライフで同時に進行するシナリオなどが融合して、セカンドライフの仮想世界型メンタルモデルが成立しているのです。


■ IT環境の課題と高い参加者平均年齢


メタバースを実現するための3Dの複雑な処理には、回線スピードやパソコンのパワーによる制約が大きく関わってきます。
リンデンラボは2002年にデモ版「リンデンワールド」を立ち上げますが、当時はモバイル時代の到来により、処理能力に劣るノートパソコンが主流だったのです。
セカンドライフの爆発的な成長が始まったのは2006年に入ってからです。

とはいえ、参加者の平均年齢は32歳(日本では30〜35歳が中心)。ビデオカードの付いたハイスペックなパソコンが必要であること、携帯電話などからアクセスできないこと、使いこなすためにはトレーニングが必要であることなどの理由により、老若男女が手軽に活用できるものになっていないことが課題です。



■ イベント参加人数の限界の問題


技術論ですが、オブジェクト指向がオープンシステムの設計思想の中にあり、それぞれが自立分散協調型で運営しています。
昨年秋現在で3500台のサーバがあると言われており、ピアー・コネクテッド・ネットワーク、それぞれのサーバが自立分散しています。


個々の島がサーバに対応していて、入れる人数が限定されています。1つのイベントに参加者1000人が限界かもしれないと言われています。
アバターの動きはオブジェクトなので、一度にたくさんの動きを制御できないからです。なお、天気の変化(ウェザーモジュール)などのシミュレーションは全てサーバ側で行われています。
セカンドライフを口コミマーケティング(バイラルアド)として考えた場合、人数が多いか少ないかを判断する必要があり、そこに弱点もあると考えなければなりません。



■ セカンドライフを企業がWeb2.0とみなす理由


セカンドライフは参加者が街を作り、モノを作り、お互いに販売する世界です。
ブログやSNS、動画投稿サイトに投稿するのと同じように、参加者はプリムでものづくりをします。
お互いの販売にはeBayモデルが参考にされていますが、それで生活できるプロはほんの一部にすぎません。
また、マイスペースがインディーズの登竜門であるのと同じように、セカンドライフはデザイナーの登竜門でもあります。
ロングテールの中から参加者が選ぶという手法はネットのみならず社会現象になっています。TVでも「アメリカンアイドル」(スター誕生のような番組)というオーディション番組が流行しています。



■ ボランティアと広告料による無料経済の台頭


セカンドライフは大衆表現社会(CGM、UGM)であり、大量のボランティアによって支えられています。
現在、書籍・音楽・映画・ビジネスソフトウェア・電話サービスなど情報系の商品において、下げ圧力(無料化圧力)が高まっていますが、その理論的背景にあるのが「クリエイティブ・コモンズ」のコンセプトです。
元来、知識や情報は公共財であり、DRM(デジタル著作権管理)の強化は消費者の創造性を奪っているとする考え方です。情報提供側も、大きくクリエイティブ・コモンズの考え方を受け入れ、著作権の一部を放棄せざるを得ない状況となっています。
一方で、セカンドライフへの企業進出ラッシュに見られるように、TVなどからインターネットへの広告費シフトが始まっています。ライセンス料や電話サービス料金に代わり、広告費で稼ぐ仕組みへと、ビジネスモデルが大きく変化していくでしょう。
マスメディア媒体も大幅なビジネスモデルの変革を迫られることになります。すでに英国ITVは2006年に13%減収。わが国も地方紙、ローカルテレビ局などから次第に影響を受け始めると考えられます。



■ 企業はなぜセカンドライフのマーケティングに走るのか?


グーグル(2006年には営業利益が前年対比73%増)やマイスペースの台頭、ブログ・SNSによるマーケティングの成功事例などを背景に、Web2.0の広告費のインターネットシフトの流れをセカンドライフがすくい上げ始めています。
セカンドライフの1つの島は20万円程度で買うことができますから、企業にとってセカンドライフへの参入障壁は低いのです。
ここで、セカンドライフを活用した企業のプロモーション事例を見てみます。

・ ブランド経験
クリスチャン・ディオール社の「宝石の島」。宝石の新商品をセカンドライフで発表し、自社商品の持つ理想的な体験を満喫できる仮想テーマパークを作りあげました。

・ ネットイベント
ロックバンドのU2はドラゴン島などで盛んにネットイベントを実施しています。また、ロイターは双方向ニュースを配信しています。セカンドライフの世界で起こっているニュースを現実世界へ、現実世界で起こっているニュースをセカンドライフへ配信しているのです。


・ プロダクト・プレースメント
カナダの携帯電話企業 テラス社は本物をイメージできる仮想携帯電話を無料で配布しています。街を歩くアバターが腰につけて宣伝することで、デモンストレーション効果が生まれています。

・ プロモーション
ワーナーブラザーズの映画「300」のプロモーションでは、セカンドライフでのアバター記者会見が行われ、予告編は多数のアバターがウォッチしました。アバター用古代衣装の無料配布も行われました。このようなミックスト・リアリティ(複合現実感)もセカンドライフの特徴です。FIFAワールドカップのパブリックビューイングを思い出してください。選手がいないのに、大画面を前に色とりどりのコスチュームで参加したサポーターが応援しています。同じように、セカンドライフに中継しても不思議ではないのです。



■ 口コミマーケティングの功罪



セカンドライフに限らず、口コミマーケティングは進化しています。

その一例がオープンソースマーケティングです。CGCM(消費者作成コマーシャル)の例として、映画『Snakes on a Plane』のプロモーション・ビデオを消費者が作り、大量にYou Tubeに投稿されたり、キャンディの「メントス」をコーラに入れて爆発させるという映像をYou Tubeに投稿することが流行し、結果的に企業側の宣伝効果になったこともあります。
NBCは2006年秋のドラマ用プロモーション・ビデオをYou Tube上で募集しました。日本でも、2006年夏に「ABC-MARTのコマーシャルソング」が消費者への公募により選ばれています。
いずれアニメの主題歌やドラマのテーマ音楽も、消費者への公募という流れに行くのではないでしょうか。

バイラルアド(口コミ広告)の活用も始まっています。映画「X-MEN 3」では、2006年春、マイスペース上に300万人の知り合いの場ができ、映画館に若者を呼び込み、シリーズものは集客が落ちるというデータを覆し、前作を上回る興行成績を生みました。
日本のミクシィも、タブレット菓子のピンキー、iPod nanoなどの知り合いの場を開始しています。
テレビコマーシャルのコストが一本数千万円必要なのに対し、バイラルアドなら最大でも500万円程度。

広告代理店やテレビ局にとっては大きな打撃となりそうです。



■ 今後のメディアミックス



2011年7月から本格的に始まる放送と通信の融合を考えたとき、セカンドライフもその中に巻き込まれると考えられます。
今後のメディアミックスは、「テレビ、ラジオ」−「ブログ&SNS」−「動画投稿サイト」−「セカンドライフ、ゲーム」−「リアルイベント」の間を行き来することになるでしょう。


例えば、TVの生放送にセカンドライフから中継を送るといった番組も実現するでしょう。
ラジオの新しい付加価値として、ラジオの生放送をセカンドライフでアバターが発信すればネットイベントのトークショーが生まれます。セカンドライフをあらゆる人に普及させるにはIT技術環境がまだ未成熟ですから、セカンドライフ内単独のマーケティングでは効果が十分とは言えません。

セカンドライフで体験したこと、例えば仮想コンサートなどが動画として投稿され、その動画を見る人がいる、というふうに、複数のメディアの行き来を想定することで、セカンドライフのバイラルアドとしての効果が高まります。



■ 質疑応答


Q1 保険商品をバーチャルで見せるとか、商品説明をアバターがするといった、セカンドライフでのビジネスは可能でしょうか?

A1 可能です。金融商品で、そういうビジネスを考えている企業もあります。
Q2 スクリュームなど、セカンドライフの競合が出ていますが、低スペックのPCでも同じような空間が作れるといったテキストベースの仮想空間についてはどのようにお考えですか?

A2 米国では「メイプルストーリー」という韓国版の仮想社会が成長しており、昨年の9月に上陸して300万人ほどの登録者がいます。最近言われている話は、スペックの問題を2Dのほうでまず解決するということです。例えばモバゲータウンやカフェスタなど、仮想空間とまでは言えなくてもアバターが登場する世界が先に普及するのではないでしょうか。


Q3 企業がセカンドライフに入ることによってユーザ側の反発があるのではないかと思うのですが、考慮すべき点について何かお考えでしょうか?

A3 Web2.0のマーケティングで最大の注意点は「やらせ」です。広告だという表明を行うこと。イベントの協賛とか、「オフィシャルドリンク」というふうな納得性のある宣伝活動をすれば受け入れられます。実際、解放軍と名乗って企業の広告に爆弾をしかけるユーザもいます。誠実性、倫理観。若い人達と同じ目線で語りかける姿勢が必要です。

Q4 仮想空間上で仮想マネーが発生していますが、国をまたいだ貨幣流通がリアルでない世界で起こることがあります。為替についての問題に関して何かご存知の話はありますか?

A4 日本では出資法の話になっておりますが、アメリカではフィリップ・ローゼンテールCEOが対応しており、米国の通貨当局も暗中模索の状態です。量が増えると規制される可能性もありますが、セカンドライフとしては勝手にやっている訳ではないという回答をしています。


Q5 通信社が情報発信するということに関して、企業が情報資産をうまく活用する方策はありますか?

A5 多くの企業では、仮想空間上での取引ではなく、外のリアルな世界でお金の取引をしています。仮想の商品を売るのではなく、本物の商品や、コンテンツを売るという方向に進んでいくでしょう。


Q6 セカンドライフのリアルタイム性の問題として、深夜に利用しているユーザなど、時間帯のズレなどが問題にならないのでしょうか?

A6 時間帯のズレの問題は大きいです。仮想社会での時間のズレは、例えば海外にいるユーザと交流するときに、時差による生活時間帯の差に顕著に現れることがあります。ネットイベントの実施にも、その点で制約が生じます。


Q7 セカンドライフに関し、インフラの面でどのようなビジネスが考えられますか?

A7 クライアントソフトの表示が日本語化すればさらによくなると思いますが、現在でも日本語でのチャットが通ったりし、それほど大きな変化は起こらないでしょう。今、土地を買い占めて転売している企業は比較的零細なソフトウェア開発会社です。もし、ビジネスになるとすれば、大手企業が進出してきたとき、土地の手配から街づくりまですべて請け負うという可能性が考えられますが、ビジネスの規模についてはまだ予測が成立しない状況です。


Q8 セカンドライフ内のマーケットを牽引していくうえでイベントを考えたとき、クリエイターと一般参加者の最適なマッチングポイントはどのようなところにあるでしょうか?

A8 各社はまだ実験段階にあります。クリエイターとは、自分で家をもってオフィスをもって、物を作っている人たちを指し、その人たちが来場する一般の人にモノを売るという関係ができています。これら草の根のクリエイターと組んでイベントを行うというのが一つの方向性でしょう。


2007.3.30
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