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■ Report
  
第94回「Eビジネス研究会」                         平成20年2月8日(金) 
   
テ   ー  マ:

『モバイルプロモーションの雄「ケイマガ」の効果と戦略』
〜日本初モバイル専用アドサーバーを駆使した
                  プロモーション手法とは〜

   
Eビジネス:
マイスター
ケイタイ広告株式会社
代表取締役社長 小野 達人 氏
    

94回目の今回は、ケイタイ広告株式会社 代表取締役社長 小野達人氏をお迎えして、「モバイル・マーケティングの常識を打ち破る高い反応・効果を叩き出すケイマガの中味と戦略とは?」と題してお話いただきました。


■ケイマガのサービス概要と立ち上げまでの経緯


我々の会社は、2005年に博報堂子会社をスピンアウトしたのが始まりです。最初は、Netプロモーションの事業から始めました。ケイマガ事業は2005年からスタート。現在は350誌を超え、リアルな世界からモバイルへトラフィックをもってきているサービスとしてはかなり大きなものに育ちました。


当時、雑誌のケータイサイトはまだ少なかった。30サイト程度しか公式サイトが無かった。雑誌社の側から見ると、いいコンテンツは持っているんだけど、どうやってケータイサイトを立ち上げればよいか分からない。技術的なことを誰に相談すればいいか、どうやってペイするか、収益化できるのか。そこに雑誌社さんはみんな悩でました。我々は、そこに着目してサービスを始めましたわけです。


雑誌社に対しては、ケイマガのサイトを持つのは無料としています。広告モデルでスタートしましたが、今は、B to C向けの課金も行っています。当社は、一般サイトでありながら課金の仕組みを持っているのです。


契約ベースで言うと、やりたいと言ってくれている媒体を含めると全部で470誌(サイト)ほどあります。国内に雑誌は3000誌くらい(アダルト、ギャンブルを除く)あると言われますが、そのうち15%ちかくはサービス化できたことになります。


サイトを持ち運用・更新・メルマガ配信が無料であるかわりに、ケータイサイトへの集客は雑誌社さんにやってもらっています。自社広告で、雑誌の誌面からケータイサイトに誘導してもらうのです。もうひとつは、コンテンツを提供してくださいというお願いです。ただし、雑誌と同じ中身がケータイにあっても仕方がないので、ケイマガ用のコンテンツは、雑誌本体とは異なります。


どういうものがキラーコンテンツかと言うと、1つは、編集長ブログ。裏話、ここだけの話などはウケがいいです。2つめは、読者投稿。ようするに、私の赤ちゃん自慢、私のペット自慢、私の筋肉自慢(ボディビルディングの雑誌の場合)など、ユーザーに自分のことを掲示板に書き込んでもらい披露してもらうのです。3つ目は、読者投票。AERAだったら、お年玉はいくらあげましたか?などが人気がありました。このように、コミュニケーションする「場」として機能しているのが特長です。


社名が「ケイタイ広告」と言ったら、媒体を買って売ってるの?と言われることがありますが、モバイルのサイト(=トラフィックの源流)から作っているというのが実態です。


■モバイル広告市場の現状


モバイルの広告市場は、電通の広告統計によると、300〜500億とも言われており、すでにラジオの広告費を追い抜きましたが、今年は雑誌の広告を抜くだろうと言われています。しかし、ケータイで、どんなプロモーションをやればいいのか―ここを提案する代理店さんは少ないのが現状です。  


モバイル広告の7、8割は、消費者金融、アダルト、美容エステなどグレー広告と言われるものが占めていました。TVなど一般に出せるような広告ではないものが多いというのが、この市場の大きな特徴なのです。そのため、代理店の広告主さんへの提案も「割り算の提案」になりがちです。総PV、CTR、CPC、CPAというふうに、聞いていると理路整然としているけれど、実は割り算をしているだけということです。


お客さんが求めているのは、どんなページを作って、どんな企画で、どういうプロモーションでお客さんを集めるのか、その上で効果を数字で把握したいということ。そのためには、事例が非常に説得力を持ちます。ところがモバイル広告の事例はなかなか貯まっていないので、事例を話すことができる会社さんが少ないのです。そこで、当社では2年前から事例を貯め込んできました。


広告代理店の本質として、小さい媒体はあまり扱われません。小さい媒体を大きなクライアントに持って行っても儲からないからです。そこで自ら、飛び込みで3000社くらいアプローチして、そのうち400社くらいにお会いしました。今ではナショナルクライアントさんが多く出稿してくれるようになりました。例えばニベア花王さんのように、よい事例がたまってくると説得力も増してくるのです。


■ケイマガ事業を始めた理由


当社では、ドリンクのボトルにシールを貼ってケータイサイトに誘導するキャンペーンなどのプロモーションを手がけてきました。そのため多くの広告主さんから、キャンペーンを告知するのにいい媒体がほしいと言われていました。マルチキャリア対応で、メール配信ができ、多くの人に認知が得られる媒体。当時は懸賞サイト全盛期だったので、他のものがありませんでした。


そもそも、ケータイサイトはPCのサイトに比べて非常に少ない。企業だと、会社のホームページはほぼ100%持っていてもケータイサイトは少数です。Googleとかgooなどの検索エンジンで動いているクローラーの性能の差も、サイトの数が少ないから、結果に差が出ないそうです。


そういった状況の中、ケータイサイトを作るんだったら雑誌がいいでしょうということになりました。大きな出版社さんは敷居が高いですが、雑誌社さんの場合、ドアを開けると社長室が見えるような会社もたくさんあります。企画書もデモサイトもない状態で、雑誌社さんにお願いして30誌くらいからスタートしました。当時、会員数は1万人程度という状態が続きました。


60サイト、70サイトくらいを超えたときに、『宣伝会議』さんが取り上げてくれて注目が集まるようになりました。100サイトを超えると、右にならえの図式で200、300サイトまですぐに伸びました。日販さんと業務提携をして信頼していただいたことも、サイト数増加につながりました。 広告主さんのほうでは、NTTドコモさんのお手伝いをすることも。例えば905iシリーズのプロモーションをやらせていただきました。このプロモーションでは、約CTR5%という結果を出すことができ、よい事例ができたことに納得していただきました。


ケイマガはモバイル媒体としては珍しく30代以上の方が多いので、そこに引き合いをいただくことも多いです。ファッション誌、音楽系、ビジネス誌など多様なジャンルを揃えていますから、それぞれに入ってくるクライアントは多種多様です。


■成功事例と失敗事例


たとえば、ケイマガでは、サッポロビールさんの新商品のプロモーションをやらせてもらっています。おもしろい事例としては、ビールを飲む時間に近い4時か5時ごろ、購買時点に近い時間帯に広告を配信するというプロモーションを行いました。


新商品のモバイルプロモーションというと、通常は2ヶ月前くらいからページ制作を始めることが必要ですが、このプロモーションは実質10日間の準備で実施できました。それがなぜできるのかというと、当社ではコンテンツマネジメントシステムという仕組みを持っているからです。後で詳しく述べますが、このシステムがあるので、クリエイティブに専念でき、短期間でプロモーションの準備ができるのです。


お正月には、サッポロビールさんがちょうど箱根駅伝のスポンサーをされているんですが、ケイマガのお正月に出す号外メールに乗せて広告を出しました。コンテンツはおみくじとしました。合計20万通メールを配信した結果、CTRは平均15%を出すことができました。タイミングとコンテンツがマッチしたことが成功要因であると思います。


一方、某大手通販コスメ企業さんがダイエットティーの一種を販売したときには、結果は購買成約数では予測を下回ってしまいました。通常は、売れた個数が多ければ多いほど喜ばれるので、その面では失敗だったと思います。ただ、かけたコストに対する効率(新規購買者の獲得率)で言うと、効率はよかったと評価していただきました。「やせる」、「ダイエット」という媒体が激戦であること、かつECのプロモーションというのは メーカーさんとは明らかに違うということなのです。


■ケイマガ憲章


当社では、モバイル広告市場を正常で健全な市場にするために、「ケイマガ憲章」というものを定めています。


消費者金融、出会い系サイトの広告を掲載不可とすること。男性アダルト雑誌系、ギャンブル系雑誌を取り扱わないこと。そして、全文広告(メールの全部が広告)は配信しないようにしています。通常お送りするメールは発売の予告、コンテンツ更新のお知らせなど。雑誌に関係ある記事を配信するようにして読者の満足度を上げ、退会防止につとめています。


■プラットフォームについて


ケイマガのサービスを支える「三種の神器」とも言えるものが、モバイルサイトを構築するコンテンツマネジメントシステム、SNS、そしてWebとメールのアドサーバーです。


コンテンツマネジメントシステムは、リアルタイムにワープロ感覚でコンテンツの作成、更新ができるツールです。1ヶ月に350本もサイトを作るのは並大抵の作業ではありません。それを、社員・アルバイトを合わせて20名のスタッフで回すことができています。ケータイサイトを構築する専門技術者を大量に集める必要がなく、スタッフがクリエイティブに専念できる。効率化の秘訣が、このシステムです。


アドサーバーは、自社開発しています。モバイルサイトではCookieが使えないので、PCのアドサーバーでは用を足せません。それから、メール広告の細かいターゲット設定は、他の配信企業では、手でやっているところもけっこう多いのが現状なのです。


結果レポートについては、月間のアクセスを日別で表示したり、1日の時間帯別、キャリア別、機種別までとることができ、csvで出力ができます。たとえば、『週刊東洋経済』だとdocomo、『Zipper』だとauのユーザーが多い、しかも機種もどのような機種が多いかわかります。といった読者プロファイルが分かるのです。


バナーのアドサーバーには、広告主さん向けの画面と、雑誌社さんから見てどのような広告が入るのか確認できる画面の両方を用意しています。ケータイサイトの場合、PV保証、インプレッション保証を実現することは容易ではありません。表示したことをどうやって測定するかが難しいからです。そこで、バナーの横にビーコンをつけて、カウントできるようにしました。弊社自社サイトでなくても、各サイトにタグをサイトに埋め込むことができれば、アドサーバーで管理することができるようにしています。


メルマガの管理のほうは、ちょうどスケジュール表のようなイメージで、広告掲載可能な枠が表示されるようになっています。レポートのメニューでは、どの雑誌で、いつに投げて、何通投げて、何クリックして、CTRはどうだったの?という情報が把握できます。


こちらは、某広告主さんの実際の結果画面です。6%、6%、5%、7%…と非常に高いCTRが出ています。母数が小さい分だけCTRが高いのは当たり前ですが、配信通数を束ねるとロングテールで束ねた数は大きくなる。クリック率も高い。というのがケイマガのビジネスモデルの強みですです。レポートはリアルタイムでクロス集計ができ、性別、年齢、既婚未婚、職業別に反応がよかった属性を検証することができます。言ってみれば広告をやりながら、レーダー探知機のようなことができるのがアドサーバーなのです。


■今後の展開


雑誌から始まったケイマガですが、現在は、新聞をもとにしたモバイルサイトも始まっています。


神奈川新聞さんの場合、甲子園大会の予選ニュースが好評です。自分の高校を応援したいというユーザーが集客できています。


また、CSチャンネルのAXNやキッズステーションのように、チャンネルのモバイルサイトも手がけています。コンビニエンスストアでは、1店ごとのお店に来た人向けのメルマガを、am/pmさんと実験的に始めています。日販さんが書店の来店客に会員登録してもらうために始めたポイント制会員システム「Honya Club」のケータイCRM(メルマガ配信など含)も同じプラットフォームでおこなっています。


このように、実際リアルの人が集まる新聞、雑誌、お店を媒体化し、キャンペーンプロモーションとして提案するというのが当社の事業です。メディア化と広告管理は、多くの場合分業されています。自前主義にこだわるというわけではなくて、今までなかったものを生み出すために、自分たちで一から作り上げてきたのです。イノベーションはしんどい。でも、それに挑戦しているのが当社です。




● 質疑応答


Q1 ケイマガの中でのSNSの状況について教えてください。

A1 ケイマガの媒体は350誌以上ありますが、いろんな雑誌を見ている人が、入っていくと横に広がってつながっていく、というのがSNSの展開方針です。現在は、新聞・雑誌のSNSを50サイトくらい実験的に実施しています。mixiさん、モバゲーさんなど汎用的なSNSが成功しているのに対し、特化型で横断的にネットワークしたSNSで成功しているものはまだありません。チャンスはあると思いますが改良すべき課題もまだまだ多いです。


Q2 過去に実施したプロモーションで効果的だったものは?

A2 正直、これが正解というものは、まだ定まっていない状態です。 手法としてウケるものに「ドンつき」と呼ばれるものがあります。例えば登録画面の後に「メールが届くまでお待ちください」などとメッセージが表示される画面で、思わず広告をクリックしてしまうケース。ここで導線が切れるのでクリックがされやすいのです。 もう1つはコンテンツ。ナショナルクライアントさんの場合、読み物型の広告を用意します。ケータイコンテンツは、こまぎれの時間に見ることが多いですから、読み物化したほうがよいのです。そこでランディングページを読み物風に階層化するといった作り込みをします。ランディングページをいかにうまく作るか。そしてどういうコンテキストで作るか。お正月におみくじがフィットするというような、読み物が季節や時期に合っているかどうかという方向付けも大切です。 ケータイの画面におけるクリエイティブ論というのも、まだ確立されるに至っていませんが、ケータイサイトをリッチに見せる手法はいくつかあります。例えば、奥行きを見せる。夕日の絵のように遠近感のあるビジュアルはコンテンツをリッチに見せ反応を高める効果があります。


Q3 雑誌社がケイマガを導入するメリットは?

A3 最近、雑誌の売れ行きは低下しています。今年も休刊になる雑誌が多くあります。その背景には雑誌売場の回転の速さがあります。書店では1500アイテムほど置けるのですが、コンビニには300アイテムくらいしか棚に置けません。そのため回転率を上げるためには返品が早くなります、月刊誌は10〜15日ほどしか店頭に置かれない場合もあります。対策として、「今日出ました」という売り日を正確に伝えて発売初速を上げなければなりません。従来は、雑誌発売日を告知するには、電車の中吊り広告やTVCMくらいしか手段がなく、高い広告宣伝費を払える雑誌社しかできませんでした。要するに、雑誌にはCRMのツールがありませんでした。読者とダイレクトにつながる、距離を縮めて売上増加に貢献する、低迷する雑誌の底上げに貢献するという姿勢を評価していただき、導入に結びついています。


Q4 今後の事業の方向性は?

A4 今、いちばんやれていないことは、モバゲーで言うとモバゴールドやアバターにあたるもの。アバターをやりたいという意味ではなく、サイトに何回も来たいという動機付けになるものがまだ弱いということです。ポイントがたまるシステムはどうか?もっと独自なものはないか?など議論中です。B to B to Cをやるには、to C部分が強くなければいけないと思っています。


2008.2.8
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