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■ Report
  
第96回「Eビジネス研究会」                         平成20年3月7日(金) 
   
テ   ー  マ:

『日本最強モバイル検索と次世代モバイルビジネスの展望』
  〜Googleモバイル「Android」はどれだけ凄いか!?〜

   
Eビジネス:
マイスター
エフルート株式会社
代表取締役社長 佐藤 崇 氏
    

96回目の今回は、エフルート株式会社 代表取締役社長 佐藤崇氏をお迎えして、「日本最強モバイル検索と次世代モバイルビジネスの展望」をテーマに、モバイル専業検索エンジンならではの市場へのアプローチについてお話しいただきました。


■モバイル検索ユーザーの利用実態


まず最初に、今年1月の検索のログから事例を取り出し、ユーザーのプロファイリングを試みてみようと思います。
 ※froute.jpでは、端末別ログ解析によって、ユーザーの行動パターンに関する
  膨大なデータを蓄積、分析してモバイル検索シーンのマーケティングを行って
  います。端末は特定できますが、その端末の持ち主の個人情報は特定できな
  いようになっています。


1人目は特徴的なキーワードを検索しているケースです。このユーザーは「Mr. Children」や「ミスチル」というキーワードをたくさん検索しています。時間帯は平日20:00以降がほとんどです。また、格闘技に関するキーワードも一日を通して検索されています。夕方以降はアダルトワードも検索されています。これらの特徴から、このユーザーは20代後半〜30代前半の男性であると考えられます。


2人目のケースでは、「おかあさんといっしょ」など子ども向けの番組名や、折り紙の折り方など、子どもに関連したキーワードが多く検索されています。また、誕生日・デコメール・キャラクター名などが特定の日にまとめて検索されています。また、第二子とか、子供の名前、赤ちゃんに関するキーワードも検索されています。このユーザーは子どもがいる既婚者であると推測できますが、子どもをあやしながらPCは使えないのでケータイ検索の利用シーンがあると考えられます。この例のように、子どもを抱える大人の利用傾向が多く見られ、モバイル検索サービスは世代を超えて使われていることが明らかになっています。


3人目のケースは、アニメの作品名やゲーム発のアニメの名前が頻繁に検索されている例です。常に同じアニメ・ゲームを検索するのではなく、たくさんの作品名が検索されています。特徴的なのは、作品名のあとに数字やバージョンを入れて検索していることです。froute.jpには動画の検索機能があるので、数字を入れることで「第何話」かを特定して探しに来ているようです。検索時間が夜中であること、見ている作品に2000年以降の最近のものが多いことから、このユーザーは大学生であると推測できます。


次に4人目のケースです。視聴率や新春ドラマといったテレビに関するキーワード、また、ドラマの名前などが放送時間帯に合わせて検索されています。また、芸能人の名前、井上和香や、ジャニーズ系タレント、特にSMAPが頻繁に検索されています。SMAPの歌の名前も複数検索されていますが、少し前に流行った曲であることが特徴です。検索は夕方16:00以降の時間帯が多く、夜中には検索されていません。これらのことから、このユーザーは20代後半〜30代前半のテレビをよく見ている女性であると考えられます。


ユーザー全体の動向として、モバイル検索は緊急のときだけでなく夜自宅で使われることが多いと言えます。ログ解析の結果、検索数が多いのは昼よりも夜の時間帯であることが分かっています。モバイル検索は出先で困ったときに使うというイメージがあると思いますが、実はその使い方は、検索を使いこなしているユーザーの中では少数です。検索ワードのジャンルは、「頻繁に検索する特定ジャンル:個人に関連したもの:困ったときの検索」に分けると「7:2:1」の割合なのです。また、繰り返し同一キーワードを検索するなどブックマーク的な使い方も見られ、PCとは異なる検索パターンも明らかになっています。


■さらに携帯ユーザーの動向を知るには


『froute search.labo』(http://labs.froute.jp/)では「検索生中継」というサイトからログの一部を公開しています。ここで、ユーザーがリアルタイムに検索しているキーワードを垣間見ることができます。たくさんのログが流れている中で、検索されたキーワードを表示しています。キーワードと同時に、検索のヒット数も表示しています。


■携帯専業検索エンジンのアプローチ


ここからは、モバイル検索の動向を踏まえ、弊社のモバイル専業の検索エンジンとして取り組をお話ししたいと思います。


エフルートのモバイル検索は、ディレクトリー検索やロボット検索以外にも画像検索、ミュージック検索、動画検索、You Tube検索などたくさんの検索機能を持っています。多言語百科事典「Wikipedia」の内容を検索・閲覧できる辞書検索サービスもあります。Wikipediaはもともと携帯からは検索できなかったものを弊社が携帯向けに変換しました。


このような特徴的な検索機能を1.2〜1.3ヶ月に1回は、新しく投入しています。これらの機能を横串で検索できる「バーティカルサーチ」が、弊社の検索エンジンの強みです。


検索結果の出し方のことをExpand Searchと呼んでいます。従来の検索であれば、上から順に表示される項目が決まっており、ユーザーは求める結果が出るまで検索ワードを増やしたり減らしたりして使うのが普通でした。これをキーワードに合った出し方に変えたのがExpand Searchです。キーワードごとに制御のパターンを変えており、建物名を検索するとエリア情報が、芸能人を検索するとミュージック検索が上のほうに分かりやすく表示されるようになっています。


例えば、「ディズニーランド」と検索しますと、音楽のダウンロード、ニュース、動画、地図などとともに、口コミ掲示板検索にもヒットします。検索結果に表示されたのは、どのアトラクションが何分待ちなのかが分かる「2ちゃんねる」の掲示板です。公式サイト以外からも、こういうサイトがあると横断的に情報提供をすることで、ユーザーは新しい発想や変わったアプローチを得ることができます。このような体験には価値があると考え、「セレンディピティ」(予期していなかったものを、偶然にうまく発見すること)と呼んでいます。


■モバイル検索を活用したビジネス例


次に、モバイル検索を活用したビジネスの方向性についてお話ししたいと思います。1つ目は、コンテンツ販売です。検索から音楽サイトへ誘導するというふうに、連携させ収益化を図るという方向性です。2つ目は、ECを展開しモバイルでの物販を実現することです。froute.jpは楽天データベースの検索ができるので、楽天モバイルへの誘導を強化していくつもりです。3つ目は、クロスメディア戦略。検索連動広告などを含めた広告事業を展開していきます。さらに、マーケティングソリューションという方向性があります。


本日お話ししたユーザープロファイリングのようなマーケティングデータを収集し、企業に販売することが可能だと思います。また、新しいビジネスとして「機能課金」というものも考えています。検索サービスの全てを無料で提供するのではなく、ユーザーがどうしても欲しい、使いたいと思う機能は有料で展開することも可能ではないでしょうか。


■モバイル検索市場の動向


ここからは、モバイル検索が今後どうなっていくのか概観したいと思います。 2006年7月にauにGoogle検索窓が登場して以来、公式サイトに検索が登場する流れができていましたが、今年4月にDoCoMoとGoogleが連携することで決定的になると思われます。今年はiモードで検索することが当たり前となり、検索窓が一階層上がることで検索在庫数が5倍〜10倍程度になると予測されています。


また今年は、高速なHSDPA端末の普及によって、ユーザーの平均検索回数の増加が見込まれる年でもあります。これらのことから、2008年は検索サービスのクリティカルマスを超える元年であると言えるでしょう。


キャリア系の検索はYahoo!とGoogleの2強という状態になっていますが、一般検索のほうは混沌としています。今年2月にはモバゲータウンが検索サービスを本格化し、ポータルサイト的な展開をしています。このような新規参入によってシェアが大きく変化し、今年は一般サイトの再編が起こるだろうと予測しています。キャリア系の場合はオーガニックサーチですが、一般サイトについてはバーティカルサーチがトレンドになっていくのではないでしょうか。


■モバイル検索はメディアの中心



「顔ちぇき」や「脳内メーカー」など診断系サイトが流行しています。これらはテレビ報道の直後に検索数が瞬時に増え、SNSに大量の書き込みがされ、情報が培養されるという特徴を持っていました。このような現象は、今後ますます増えていくでしょう。


テレビを見ながらケータイで検索することが日常的になり、また雑誌を見ながら検索するユーザーも増えてくると、従来のQRコードがモバイル検索に置き換わっていくことも予想されます。モバイル検索は、テレビ・雑誌・新聞・ラジオ・PCインターネット等とモバイルインターネットとのクロスメディアを促進するための情報のハブとして、重要度を増していくことでしょう。


■Googleの動き


最後に、Googleの動向に対する見解をお話ししたいと思います。


GoogleがAndroidを開発したことで、サービスからインフラまですべてのレイヤーを支配してくるという見方もあるようです。しかしそれでは、マイクロソフトのWindows上にGoogleが存在するという、Googleのあり方を否定することになります。モバイルにおいて、Googleがインフラのレイヤーに行くのであれば、我々はAndroid上で動くコンテンツを設計すればよいのです。


Googleは、Webというレイヤーからプラットフォームを作った会社です。上のレイヤーから下のレイヤーを作るというアプローチをすれば、かつては考えられなかったようなUIが発達することも期待できます。iPhoneのように、日本のケータイメーカーが考えられないような、より洗練され使いやすいUIが登場するかもしれません。そういう視点でGoogleに期待し、注視しています。


Googleの動向により、競争環境は激化するものと思われますが、そもそもモバイル検索自体がまだポピュラーでないのも現状です。弊社は、検索サービスのブランドを確立すること、ユーザー数を400万人から1000万人規模に拡大すること、検索連動広告に並ぶ収益源の確保などを課題に、市場拡大を生かした事業拡大を図っていきたいと考えています。


■froute.jp/エフルートとは


日本で数少ない、モバイル検索を専業とする会社です。検索エンジンとともに、着メロ、着うた、電子書籍、コミックなどの公式サイトを運営するコンテンツ配信事業。広告配信プラットフォームの事業を行っています。


パートナー企業にはコンテンツホルダーと、モバイルマーケティングを取り入れたい企業があります。弊社のサービスを利用している個人ユーザーとパートナー企業を結ぶB to B to Cの役割をしています。


froute.jpは、定額制携帯電話ユーザーにターゲットを絞り、無料で多角的に情報提供を進めている月間ユニークユーザー数、約400万人のモバイル検索サービスです。DoCoMo, au, Softbankのいわゆる3キャリアに対応しています。また、検索機能にこだわったサービス展開をしております。




● 質疑応答


Q1 コンテンツフィルタリングは、モバイル検索にも影響を与えるのでしょうか?

A1 現在、青少年向けにコンテンツのフィルタリングをかける動きが見られますが、規制の動向は流動的です。しかし、規制の有無に関わらず、不健全なサイトはフィルタリングして当然だと思います。弊社では、コンテンツプロバイダと連携を行い、フィルタのかからない良質なサイトを検索結果に表示するようにしています。そのため、フィルタリングの影響は限定的になると思われます。


Q2 PCと携帯の違いとして、データの加工や処理に限界はありますか? また、モバイル検索では特に、位置情報が重視されるのでしょうか?

A2 位置情報は、レストラン情報の中で利用していますが、ユーザーにはあまり使われていません。現状ですと、「位置情報を送信しますか?」という画面が入り、操作が面倒であるためです。対策として、検索ワードの履歴から、頻繁に検索する特定地域を学習するといったアプローチの検索エンジンが必要ではないかと考えています。 データ処理に関しては、分類分けやクラスタリングに課題があります。そのため、データベースのデータベース、といったものが必要だと考えています。


Q3 froute.jpの400万人のユーザーには、モバイルだけを使う人も、PCとモバイルを併用する人もいるのではないかと思います。そのうち、どういった層をターゲットとし、どのようにヘビーユーザー化する戦略を持っていますか?

A3 メインターゲットは、パケット定額制ユーザーで、年齢が22、23歳前後の人としています。パケット定額制を使っている世代と使っていない世代には大きな壁があります。境目は、現在新卒就職活動中くらいの人のようです。 いったんパケット定額を楽しむと、モバイルコンテンツを頻繁に使うようになります。一方で、その上の世代はパケット定額をあまり利用していないのです。 22、23歳前後というと、人口比率からすると結構な数のユーザーがいます。したがって、まずはパケット定額制のユーザーに絞ったサービスを展開しようとしています。 「時々使う」ユーザーをヘビーユーザーにするためには、ケータイならではの速報性を生かしたサービスを投入することが有効であると考えています。


Q4 検索エンジンは自社開発を行っているとのことですが、エンジニアを確保するのは難しいのではないでしょうか?

A4 エンジニアを採用する際には、エンドユーザー向けのアプローチができることをアピールしています。技術だけで言うと、専門の会社にいたほうが力が付くかもしれません。むしろ弊社では、プログラムは手段と考え、サービスやものづくりを楽しめる人に来ていただきたいと思っています。ユーザーの反応に接することで、エンジニアは緊張感の中で成長していっています。いろいろな経歴の人がいて、元バーテンダーとか、音楽の打ち込みをやっていた人など多彩です。最近は、新卒採用にも力を入れています。


2008.3.7
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