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■ Report
  
第97回「Eビジネス研究会」                         平成20年5月21日(水) 
   
テ   ー  マ:

『「グリーンIT」で激変する業界地図、
             IT業界の次世代ビジネスモデルとは』
〜環境を見据えた未来型IT企業と社会的役割の重要性〜

   
Eビジネス:
マイスター
経済産業省
商務情報政策局 情報通信機器課 参事官 
星野 岳穂 氏
    

97回目の今回は、経済産業省 商務情報政策局 星野岳穂氏をお迎えして、「『グリーンIT』が拓く新情報時代」をテーマに、話題のキーワード「グリーンIT」についてさまざまな側面からお話しいただきました。


■なぜ、今「グリーンIT」か


最近はようやく、グリーンITという言葉が一般的になりました。「地球環境問題」という言葉が注目され始めたのは平成元年、旧通産省に地球環境対策室という課ができた頃からで、既に20年経過していますが、今改めて地球環境問題、とりわけ地球温暖化問題が非常に大きなキーワードになっています。その中で、「グリーンIT」が注目されていますが、今日はその背景をご紹介したいと思います。


高度情報化社会の進展に伴って、インターネットの中を飛び交う情報量は爆発的に伸びております。日本国内では、2025年には情報流通量が現在の約200倍に膨れ上がると予測されています。もともと情報処理というのは言うまでもなく電力を使うものです。近年ネットワーク機器の設置台数はどんどん膨れ上がり、サーバ、ルータ、パソコン、ディスプレイ、いずれの電力消費量も急増しています。このまま行けば、2025年には現在の約5倍(国内全消費全力量の2割)に達してしまいます。今後も高性能化と同時に省エネ技術も引き続き進展すると仮定してもこのペースです。このように、ITの省エネが緊急の課題になってきているのです。


■「グリーンIT」は世界全体の課題


情報化社会の進展を背景としたIT機器・システムの省エネ問題は、もちろん日本だけの課題ではありません。先進国に加えて中国、ロシア、ブラジル、中東等もどんどん社会の情報化が進んでいきます。


世界中のITによる電力消費量を予測すると、2025年には現在の10倍近い増加になると予測しています。世界の全消費電力量は46兆キロワット程度ですが、将来はその1割以上をIT機器による消費が占めるとの試算になります。実際にそれだけの発電ができるか、電力供給が賄えるのかという別の議論がありますからあくまで試算の値ですが、現在のトレンドから予測すると、これだけの数字になってしまうのです。


■「グリーンIT」が新しい価値基準に


少し身近なところでは、ブレードサーバがぎっしり積み込まれている大規模なデータセンターでは、サーバと空調の電力消費によるランニングコストがかさみ、電力代がビジネス自体を脅かすほどの存在になってきました。このままいくと、ブレードサーバを購入する金額よりもそれをメンテナンスする電力代のほうが上回ってしまいます。


例えば自動車であれば、ガソリン代が高くなると自動車で移動するのをやめて電車にするなどの代替手段があり得ます。しかし、現代の情報化社会には代替手段がありません。メールをやめて葉書にというわけにはいきません。ですから、ITの省エネは更に深刻な課題なのです。


また、最近では、単に電力コストを下げるという側面だけではなく、省エネをするすなわち環境対策に取り組んでいる、という企業姿勢がCSR(企業の社会的責任)の観点で高く評価され企業価値を高めることにもつながっています。このような背景から、「グリーンIT」を世界の各社が一斉に、本格的に取り組み始めたわけです。


■国内外の企業が「グリーンIT」の取り組みを本格化


「グリーンIT」は、実際には2006年頃から本格的に議論されはじめ、2007年の夏くらいから、組織的な動きが見られるようになりました。例えばGoogleは巨大なデータセンターを持っている、インテルは一番熱を出しているもとであるCPUの最大手ということもあり、この2社を中核として米国企業中心にコンソーシアムが結成されました。電力消費の規制をされる前に、企業努力をしてコンピュータの省エネを達成しようという動きが生まれたのです。これが「クライメートセイバーズ」です。


もう1つ、AMD、HP、サン、IBMなどが結成している「グリーングリッド」というコンソーシアムも誕生し、主にデータセンターというレベルでの省エネを追求し、ワールドワイドに活動を拡大しています。


「グリーンIT」は、昨年11月には米国の調査会社ガートナーが発表した「企業経営に影響を与えるIT技術ランキング」の2008年のトップ10の1番目に挙げられていました。まさにその予測が的中したと言えるでしょう。日本では、1970年代の2度の石油ショックの教訓から、省エネ意識についてはもともと海外より高い意識を持っていました。その意味で、日本ではすでにITの省エネ努力は普段から進めていたけれど、騒ぎ始めたのはアメリカのほうが早かったということかと思います。


■日本発の「グリーンIT」の考え方


我が国としては、グリーンITの国際的な動きは「ITと環境」の関係を正面から考え直す良い機会であると捉えています。改めてITと省エネに思いを馳せると、実は今お話しした「IT機器・システムの省エネ」だけではなく、「ITを活用した社会の省エネ」という面もあることが分かります。


例えば、工場にエネルギー最適管理システムを導入して、消費電力を20%削減できたとか、電子計測技術等の導入で、過去15年間にCO2排出原単位を最高で60%削減できたという成果例もありました。ITを社会に広めることによってものすごい省エネ効果があったということも重要な側面です。日本としては、「グリーンIT」を語る時にはこの両面、「ITの省エネ」と「ITによる社会の省エネ」、この双方があることを世界に訴えていきたいと考えています。


ITによる社会の省エネを実証する具体的な動きの例として、現在東京大学工学部が進めている「グリーン東京大学プロジェクト」があります。センサー技術によってキャンパスの建物内の電力消費を可視化してきめ細かく統合管理し、徹底的に無駄を省いて省エネを達成しようというプロジェクトです。ビル内に無線センサーを多数配備し、人がいないときには空調やIT機器を自動的に切ったり、通常レベルと違う電力消費があればその理由を確認しようというものです。


■グリーンITイニシアティブの展開


ITの省エネをどんどん進めながら、ITを使ったほうが社会の省エネにつながることを証明しよう、それが日本らしいグリーンITになるという考え方から生まれたのが「グリーンITイニシアティブ」です。


これは、経済産業大臣自ら主導するプロジェクトとして昨年の12月に産業界の方を交えて会議を開催し、その場で提唱いたしました。今年2月には、日本のITに関係する様々な業界団体が発起人となって「グリーンIT推進協議会」が結成されました。


このコンソーシアムでの考え方はまさに「ITを使って省エネします。環境のためにITを使いましょう」というもので、発足当初から海外の主要IT企業の方々も参加されています。本年5月の東京ででグリーンIT国際シンポジウムでは、講演者の約半分がアメリカ、台湾、ヨーロッパのからの要人です。


■グリーンITプロジェクトの推進



これまでも、政府として半導体やディスプレイ等のIT関連の省エネ技術開発を推進してきましたが、今年から中長期的なR&Dのプロジェクトとして「グリーンITプロジェクト」が開始されました。このプロジェクトでは、ネットワーク機器とそのシステム全体としての省エネを目指しています。特にデータセンターにおける電力消費の削減に力を入れています。サーバの省エネとして特に注目されているのは水冷の技術です。これからは空冷ではなく液体冷却を取り入れる時代であると展望しています。


また、ストレージに対してはハードディスクを小さくするための高密度技術が開発されています。それぞれに少しずつデータが記録されていてフル稼働していては効率が悪いので、できるだけ寄せて、瞬時に自動的に処理できるような技術を開発していきます。


一方で、性能向上ではなく「省エネ」が最優先と考えたとき、本当に今のネットワークシステムが最善なのかという議論もされています。


例えば、データを磁気テープで保存する。技術的には明らかに逆行ですが、重要情報で長期間保存しておかなければならないデータがあり、しかも電子媒体で残しておかなければならない。けれども、データの使用頻度は低くめったに見ない。めったに見ないといっても絶対に廃棄はできない。そういうデータは、考え方によっては磁器テープに保存した方がエネルギーを消費しないで済むというわけです。アクセス速度は当然落ちますが、アクセス頻度から考えれば我慢できる。グリーンITによって、今までの価値観ではない技術が改めて脚光を浴びる可能性があります。技術の逆行というより、古い技術が新しい価値観で見直されることがあるのです。そしてそこに、新しいビジネスチャンスが生まれるかもしれません。


もう1つはルータです。ルータの数は膨大にあり、1日中フル稼働していますが、実際の情報流通量は、時間帯によって増減がどの程度かはある程度統計的に分かっています。そこで注目されているのが、ルータのエンジンを、本当に必要な数だけに限定して後はオフにしてしまうスイッチング技術です。そして、万一予想外に大量のデータが送信されてきたとき、それを事前に察知して、落としていたエンジンを1000分の1秒や5000分の1秒で瞬時に立ち上げデータ受信に備える技術があれば、無駄な電力消費を抑えることができるようになるでしょう。Power on Demandの考え方の1つです。


また、人間とのインターフェースであるディスプレイにも省エネ技術の開発が求められています。プラズマ、液晶に続き、最近は有機ELも実用化に向けた努力がなされています。これらのディスプレイの省エネを追求する技術です。ディスプレイでは、製造メーカ各社は美しさや高画質を競いますが、加えて、あまり電力を消費しなくても美しい画像を見せるにはどのようにすればいいかを技術開発するのです。


このような取り組みの成果として、IT機器の電力消費効率を現在の半分位にしましょうという目標を掲げています。


■「グリーンIT」時代のビジネスチャンス


グリーンITで重要なのは技術開発だけでなく、実際に省エネ機器が社会に導入され、電力消費削減の効果を出すことです。これについては、省エネルギー法という法律に基づく「トップランナー方式」という仕組みがあります。これは、家電製品や自動車等の省エネを進めるべき各々の機器において、現在市場に投入されている製品のうち最もエネルギー消費効率が優れている製品すなわちトップランナーの性能を省エネ目標と定め、決められた将来までにその目標を産業界全体が達成することを求める方式です。


自動車や家電製品の場合は消費者へのアピールもあって、メーカは省エネ製品の市場投入を競います。ところがルータやデータセンターのサーバは消費者の目にふれません。そこで、IT機器の製造企業や利用者の皆様にも、省エネをしっかり認識していただこうと、トップランナー制度への品目追加や基準見直しを進めていきます。これにより、IT分野でも省エネ機器が従来に増してビジネスチャンスに繋がっていきます。


ところで、ITで省エネというと、今お話ししたとおり、どうしてもハード中心の議論のイメージがあり、今までソフトウエアの面からの議論やお知恵を頂く機会があまりありませんでした。しかしITはハードとソフトが両輪であることは言うまでもありません。


グリーンITでも、ハードだけでなくソフトによる省エネに大きな期待が寄せられています。例えば最近注目が高まっている仮想化技術や、ソフト・システム管理による効率化の実現、統合管理による全体最適化の省エネなどが、今後の切り札になるのではないかと思います。 また、携帯電話も、「グリーン」という切り口で製品開発をすれば新しいサービスができるかもしれません。充電効率のよい携帯、災害・緊急時には充電をしなくても搭載した太陽電池だけで通話ができる携帯など。


最後に、グリーンITは、実は省エネだけではありません。リサイクルや、化学物質管理などの環境問題にも、ITはしっかり取り組んでいくことが求められます。例えば携帯電話には貴重なレアメタルが多く使われています。リサイクルしやすい携帯電話を開発すれば価値が上がるのではないでしょうか、これも広い意味ではグリーンITと言えるでしょう。いずれにしても、地球環境問題解決、地球温暖化対策という政策の軸がぶれることはありませんが、同時に、そうした新しい価値基準に基づきITでも新しいビジネスが次々と生まれる可能性があるということも念頭に置きつつ、今後ともご協力いただきたいと思います。ありがとうございました。




● 質疑応答


Q1 昨年くらいから日本でグリーンITという言葉が脚光を浴びてきました。5、6年前に総務省さんから環境に関する提言があったことを覚えているのですが、それ以降、地球環境問題に対する目立った政策はなかったように思います。グリーンITが急に復活したのは国の政策に変化があったからでしょうか?

A1 グリーンITの背景となる、ITによる電力消費に対する問題意識は以前にもありました。例えば国内でもNTTデータのようなデータを多く扱う企業は、今は未だ規模との見合いでも電力が安いからいいが早晩は大変な課題になるといち早く気付かれ、先見の明を持って研究を始めておられました。少しずつ予兆があったのは3、4年前からでしょうか。


国の政策という面では、京都議定書によって1990年よりもCO2排出量を6%減らさなければならないことが決まっていますが、未だ目標は達成できておらず、エネルギー消費を抜本的に削減しなければ、他国からCO2排出権を買うことしか選択肢がなくなってしまいます。これには多大なコストがかかります。


そして洞爺湖サミットが開催され、京都の次の枠組みをどうするかで世界中が議論をしています。このような背景で、これから電力消費が急増しそうだ、それを抑える切り札としての「グリーンIT」が脚光を浴びるようになったのでしょう。


Q2 2020年という目標は、結構近いようで遠いように思います。IT機器の省エネ、あるいはその利用によって削減できる電力といっても、効率のベースが時とともに変化するのではないでしょうか?環境効率や環境負荷の指標をどのように考えていらっしゃいますか?

A2 ITの電力消費効率については、今まで通りに省エネ技術が進み効率も少しずつ高まることを前提に試算しています。今後は、省エネの観点からどのようなIT技術が有効であるかというロードマップも、グリーンIT推進協議会で検討される予定です。


グリーンITの評価指標としては、現在検討中です。環境への貢献を評価するかということに対し、単純に生産段階でCO2を出すのが悪いということではなく、生産されたIT機器が環境にどれほど貢献するかということも総合的に評価できる枠組みにしたいと考えています。


2008.5.21
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